ずっと映画のことを考えている

旧「Editor's Record」(2023.2.28変更)

雑誌

「和樂」No.127「京都は美味しい!」

平安時代の高盛り飯の周りの料理のことをおまわり、数が多いほど豪華なので、かずもの、おかずと呼び、普段のおかずを総称しておばんざいとしたそうです。精進料理、懐石、門前茶屋、料亭…。他にも日本料理のほとんどの源流は京都にあります。というよりも、…

「Free & Easy」No.162「ALL ABOUT RUGGED TRAD」

「丈夫で長持ちすること、流行に左右されないこと、そしてこれを着ることによってひとつのプレステージを得られること」が VAN のプリンシプル。まさしくトラディショナルです。創業者である石津謙介は「働けとは一言もいわず、むしろもっと新しい遊びを覚え…

「rockin'on」No.532「ローリング・ストーンズ50周年を全員が語った!」

「ミックは常にこのバンドを引っ張ってきた。キースは常にこのバンド“そのもの”だった。ふたりのどちらも正しいんだよ」とチャーリー・ワッツが語るだけでヤバい。胸が高鳴る。わずか16ページの特集を、立ち読みでなく、一言一言、家でじっくり噛みしめるため…

文藝別冊「花森安治 美しい「暮し」の創始者」

家族を守れない人間に、社会や国家、ましてや世界を良くすることはできない。あの「暮しの手帖」創刊の背景に「暮らしを犠牲にしてまで守る、戦うものはなんにもなかった」という戦争への深い反省があったことを初めて知りました。名編集者・花森安治の類稀な…

「Pen」No.308「ユダヤ・キリスト・イスラム 3宗教の聖地へ。エルサレム」

民族の祖と呼ばれるアブラハムが目指し、イエス・キリストが死と復活を遂げ、ムハンマドが昇天したといわれるエルサレム。創造と破壊、隆盛と衰退、解放と迫害、集結と離散…。「平和のあるところ」という言葉が語源となったこの土地の歴史をいくらひも解いて…

「BRUTUS」No.726「マンガが好きで好きでたまらない。」

マンガ家のクリエーションというのはすごい。絵が上手いというのはもちろん、物語をつくることができ、それを構成し、独自の世界観をもって表現しなければならない。映画でいえば、撮影・脚本・編集、そして、監督を、すべて1人で手がけて完成させているという…

「Pen」No.307「1冊まるごと コム デ ギャルソン」

新しいものをクリエイトするには「四六時中、飢餓状態でいなければいけない」と川久保玲。そして「日々感じる疑問とか恐怖、あるいは希望、怒りといった気持ち」がそのクリエイションを支えているという。ほかにまったくないものを43年間つくり続け、今や600…

「美術手帖」No.963「松井冬子」

切断された身体の一部、内臓を含めた身体の部位、野ざらしになった死体、朽ち果てていく植物など、思わず目をそむけたくなるモチーフを、繰り返し描いてきた日本画家・松井冬子。結局は「真理を追求する気持ち」であると彼女は語ります。「会場に来た人がはら…

「「旬」がまるごと」No.29「しお」

砂糖に代わるものはあっても塩に代わるものは存在しない。血液に近い海水の成分バランスは、人には真似できない母なる海の調合であり、そこに人にしかできない働きかけがあって、はじめてこの授かりものは結晶するのだという。それにしても、日本最古の「揚…

「広告」Vol.388「やさしい革命」

編集部が一新する夏のリニューアルに向け、今号で一旦休刊となる雑誌「広告」の特集は「やさしい革命」。これからの社会のために 1.「縁」でつながろう。2.創造的になろう。3.今を充実させよう。4.オープンになろう。5.よりどころをつくろう。という5つの提…

別冊太陽「出雲 古事記のふるさとを旅する」

出雲大社は60年に1度の「遷宮」の真っ最中。神様の住まいを造替するこの神事には、有限存在の更新、即ち、生命の継承と同じ意味が与えられているそうです。そして、この「遷宮」の価値は「伝え継ぎ、祈り継ぎ、繰り返してきた列島の人々の心に営みにこそある…

「SWITCH」No.262「僕らのバイブル 表現者たちの本棚」

「SWITCH」No.262「僕らのバイブル 表現者たちの本棚」謹賀新年。年が明けて初の書店へ。今年はじめて買った雑誌は「SWITCH」で「31人の表現者が語る創作を刺激する本227冊」の特集でした。事実上の仕事始めです。今年も、できるだけ多くの雑誌や本を読んで…

「MUSIC MAGAZINE」Vol.591「ベスト・アルバム2011」

新しいものは無条件で素晴らしい。そう信じるようになったのは、編集という仕事に就いてからです。無論、古くから変わらないものにも強い愛着を感じますが、ドキドキ・ワクワクする、あの何ともいえない高揚感は、時代をつくりだす新しいものには敵いません。…

「食生活」Vol.106「特集 抹茶」

「鳥の雛が生まれる時に、内側から雛がつつくのと、親鳥が外から殻をついばむのが同時になったとき、見事に殻が二つに割れて新しい命が誕生すること」から派生した啐啄同時という言葉があるそうです。もてなす人と、もてなされる人が、「気」と「機」をぴた…

「Pen」No.505「ルネサンスとは何か」

ルネサンス以前には「画家は個性を発揮してはならなかったし、署名をすることもなかった」という。中世のイコンがどれも似通っている理由はどうもそういうことらしい。そこにきての、前時代からの脱却。この1冊に収められている絵画、彫刻、建築を見ると、ま…

「Number」No.793「誰も知らないキング・カズ」

44歳の今もプロとして現役を続けている彼が、少なくとも20代の後半頃から、入念かつ周到な準備を着々と進めていたであろうことは想像にたやすい。ビジョンに向かって、フィジカルも、メンタルも、自らのすべてを律することができる真のプロフェッショナル。…

「rockin'on」No.529「2011年、ジョン・レノンを聴く」

人生でもっとも影響を受けた人物をひとり挙げるならジョン・レノンです。もしもジョンが生きていたとしたら、どんな言葉を発して、どんな行動を起こしているかということがいつも念頭にあります。今日はジョン・レノンの31回目の命日ですね。「みんな苦しんで…

「en-taxi」Vol.34「伊集院静 狂気の流儀」

あの震災以降、当事者となった伊集院静(彼は自らを「被災者」と呼ぶのを厳しく慎んでいるらしい)はやはり特別な存在となった。そのことは、恐らく本人が一番自覚しており、日本の危険な原発の体制を生んだのは誰であろう自分たちだとした上で、「私は世界…

「BRUTUS」No.722「日本一の“手みやげ”は、どれだ!?」

継続は力なり。とりわけ雑誌の世界では、編集者に情報が蓄積し、その機が熟したとき、驚くべき広がりと深まりをもった特集が生まれたりします。最新号の「BRUTUS」はもはや円熟の域。お馴染みの審査員4名がわいわいがやがや。仕事を超えた本気度100%の選考…

「SWITCH」No.261「坂本龍一 音楽に萌える」

坂本龍一という音楽家はいつも音そのものを探究しているように思えてならない。彼にとってそれはきっと、生きることそのものを探究していることと同じはずだ。彼が行ったインタビューの中で、東野珠実さんという笙奏者が語った「音楽というのは本来“良い呼吸…

「青春と読書」No.424

これは集英社の読書情報誌。茂木健一郎さんのエッセイを筆頭に、尾木ママによる教育の話、村田沙耶香さんによる性の話、佐高信さんと古賀茂明さんによる国家と電力の話など、時代のツボを押さえた充実の内容でわずか90円。本という活字メディアの有用性を強…

「BRUTUS」No.721「Life is a Movie 24人の監督、映画にまつわる人生の話。」

侯孝賢、ケン・ローチ、小津安二郎、エミール・クストリッツァ、陳玉勲、キム・ギドク、ガス・ヴァン・サント、クリント・イーストウッド、西川美和…。挙げ始めるときりがありませんが、私をわくわくさせてくれるのは、今も昔も、俳優ではなく古今東西の映画監督た…

「Pen」No.502「1冊まるごと森本千絵。」

超一流のクリエイターの仕事というのは「大切なもの」の輪郭がどれもはっきりと浮かび上がってくる。森本千絵さんのクリエーションにおいてそれは「やさしさ」という言葉で言い表わすことができるように思います。もっとありていに言ってしまえば「愛」です…

「Number」No.790「決戦秘話。秋のプロ野球名勝負」

秋に名勝負が多いのは「1年の戦いの成否がわずか数試合で出される残酷さにある」と長嶋さん。確かに、球史に残る「大一番」と呼ばれる試合に臨んだナインには、どこか悲壮感ともいえる覚悟が全身から漲っていたように思います。野球が面白いのは「男の美学」…

「Newsweek 日本版」No.1273「カダフィ殺害の禍根」

ときに虐殺も厭わず民衆を抑圧した独裁は決して許されないとしても、ピースサインでケータイ写真を撮りながら血まみれの遺体を取り囲み、ついには、市中を引きずり回した反カダフィ派の行動には釈然としないものがあります。「暴力で憎む人を殺すことはでき…

「SWITCH」Vol.29 No.11「深津絵里という名のコメディエンヌ」

真面目にひとを笑わせるという難しさ。「人間の出来る最大の仕事は、人が行く悲しい運命を忘れさせるような、その瞬間だけでも抵抗出来るようないい笑いをみんなで作り合っていくことだ」という言葉を井上ひさしさんは残しています。「コメディができる」と…

「BRUTUS」No.719「必修 古美術研究旅行」

世界はとんでもなく広く、いろいろな文化があることを、日本人もなんとなく理解できたであろう奈良時代。「奈良に残っているのは、いわば我々の祖先が自らのアイデンティティを確立しようとしていた時代の、日本が上げた産声の痕跡のようなもの」と千住博さ…

「Number」No.788「F1鈴鹿伝説。」

命をかけてしのぎを削ったライバル同士には、愛憎が入り混じった特別な関係が生まれます。アイルトン・セナが死の前日、すでに現役を引退していたアラン・プロストに、フリー走行中の運転席から、車載カメラと無線を通じて送った「アラン、君がいなくて寂しい…

別冊「太陽」189「木村伊兵衛 人間を写しとった写真家」

いま、この瞬間は、あっという間に過去となってしまう。「写真っていうのはノスタルジーだ」と荒木経維は語っていますが、写真は、美しい瞬間を切りとる記憶装置であるということがいえると思っています。東京下町の街角を、昭和という時代を、技を受け継ぐ…

「広告」Vol.387「明日を生きるための物語論」

宮沢賢治の「けれども、わたくしは、これらのちいさなものがたりの幾きれかが、おしまい、あなたのすきとおったほんとうのたべものになることを、どんなにねがうかわかりません」という言葉。身体のための食べものではなく、心のための、魂のための食べもの…