寅さんはいつも若者に慕われる。打算のない無垢な純真さがお互いに共鳴するからだ。考えなしに柴又から九州・佐賀までバイクを走らせた甥っ子・満男を無条件に受け入れる懐の大きさ、人情深さがグッと沁みる。いよいよ終盤へ。後藤久美子の瑞々しさも光る、シリーズ屈指の傑作だった。
「美と殺戮のすべて」ローラ・ポイトラス
出自というのは不思議だ。どのような両親の元で、どのように育てられたかで、その後の人生が運命づけられる。不都合な出来事が闇に葬られ、なかったことにされることへの異議申し立て。常に物議をかもしてきた写真家ナン・ゴールディンの創作と闘いの根幹には、耐えがたい寂しさと怒りがあったのだと思い知らされる。
「年少日記」ニック・チェク
毒親の難しさは本人にその自覚がないということだ。事の重大さに気づいたとき、すでに取り返しのつかない事態となっている。この映画が感動的なのは、ほんものの愛を知らず、かつて心に傷を負った人間が、人を憂い、思い、愛するということを決して諦めないところ。それが救いだった。
「PERFECT DAYS」ヴィム・ヴェンダース
ベストテン2025
2025年もあと2日。1年のスピードの速さに驚くばかりです。
今年観た映画は44本。コロナ禍よりも少ない本数となってしまいましたが、時間を見つけては、相も変わらず映画を観ています。
気がつけば、2011年からライフワークとして記録している映画の記事も随分と長くなりました。これからも変わらず、マイペースで積み重ねていきたいと思います。
さて、14年目を迎える年末恒例のベストテン。わずかな本数から、特に印象に残った映画は、
「落下の解剖学」ジュスティーヌ・トリエ
「お母さんが一緒」橋口亮輔
「ミッシング」𠮷田恵輔
「ルート29」森井勇佑
「敵」吉田大八
「ファーストキス 1ST KISS」塚原あゆ子
「ぼくのお日さま」奥山大史
「ANORA アノーラ」ショーン・ベイカー
「蛇の道」黒沢清
「Playground/校庭」ローラ・ワンデル
観た順番で上記の10本。カンヌを獲ったショーン・ベイカーのほか、橋口亮輔、𠮷田恵輔、吉田大八といった大好きな監督が並ぶ中、森井勇佑やローラ・ワンデルの新しい感性に胸が躍りました。
とても残念だったのは原田眞人監督の訃報。日本の情緒を知り尽くし、それを最も美しく撮ることのできる稀有な映画監督でした。
今年も1年間、本当にありがとうございました。年始の準備を終えて、今から実家へ向かいます。
皆様、どうぞ良いお年をお迎えください。
