ずっと映画のことを考えている

旧「Editor's Record」(2023.2.28変更)

「探偵マリコの生涯で一番悲惨な日」内田英治/片山慎三

東京で知ったのは、いろんな人がいろんな風に生きている、ということだ。とくに夜の新宿では、いろんな人も、いろんな物も、いろんな事もみた。新宿歌舞伎町、ゴールデン街のバーで繰り広げられる人間模様は、どれもやるせなく、そして、とてつもなくせつない。中でも、落ちぶれたヤクザを演じた、北村有起哉が突出していた。ほんとうにいい俳優さんだ。

 

映画『探偵マリコの生涯で一番悲惨な日』オフィシャルサイト 2023年6/30公開

「THE FIRST SLAM DUNK」井上雄彦

作り手の熱意こそが作品に魂を宿す。それは実写もアニメも同じだ。想像を超える志の高さと、決して諦めない執念が、誰もが知るあのキャラクター、あのストーリー、あの世界観を超越した、奇跡の映画を生みだした。湘北メンバーが集結するオープニングは鳥肌もの。ゾクゾクするとはまさにこのことだ。

 

映画『THE FIRST SLAM DUNK』

「男はつらいよ 寅次郎真実一路」山田洋次

日経平均株価が初めて1万円を突破し、日本のバブル経済の始まりの年とされる1984年。働いて、働いて、働いて、その先にしあわせは訪れるのかを、すでに予見している寅さん34作。好景気だろうが、不景気だろうが、寅さんはずっと何にも変わらない。それにしても、マドンナとして2回目の登場、男はつらいよシリーズの大原麗子は圧巻の美しさ。こんなにも艶やかな女優は、平成にも、令和にも見当たらない。

 

男はつらいよ 寅次郎真実一路 | 作品 | 松竹映画『男はつらいよ』公式サイト

 

 




「白鍵と黒鍵の間に」冨永昌敬

昭和の銀座。金と欲望が渦巻く世界は、どこか非現実的で、そこにたむろする人々、ひとり一人の人生にドラマがみえる。銀座を牛耳るヤクザが経営するバーに響く、一癖も二癖もあるミュージシャンが奏でる「ゴッドファーザー愛のテーマ」。ジャズのように自由奔放、荒唐無稽で、隅々にまで色気が漂う映画だった。

 

映画『白鍵と黒鍵の間に』オフィシャルサイト

「ほつれる」加藤拓也

ほとんどの場合、答えはもう決まっている。そして、多くの場合、みんな、気づかないふりをし、見て見ぬふりをし、問題を先延ばしにしながら生きている。理屈ではなく感情で動く人間の弱さや狡さをつまびらかにしながら、それでも生きていく一人の女性の物語。

 

映画『ほつれる』公式サイト