かつて彼の映画に出演した俳優・渡辺謙はイーストウッドの映画作りを「スタッフを信じて1日ずつカットを積み上げていく」と評した。監督50周年記念作品となる今作に垣間見えるのは、そんな丹精を込めた1カット1カットの丁寧さ、映画に対する絶えることのない、静かに燃えたぎる情熱だ。円熟味などという言葉が陳腐に思えるくらいイーストウッドは特別。90歳を超えた彼のロードムービーを観られることの幸せたるや!
細田守監督は、デジタルも、アナログも、いずれも強く肯定しながら、同時に疑うことを忘れない。そして、彼の作品にいつも魅了されるのは、生きること、すなわち、命を、寸分の迷いもなく全肯定するからだ。中村佳穂をはじめとする天才たちの奇跡のコラボレーションによって生みだされた音楽と、圧倒的な映像世界との融合は、まさしく新境地。一体アニメーションはどこまで進化するんだろう。楽しみでもあり、怖ろしくさえある。