Editor's Record

観たモノ、読んだモノ、聴いたモノ。好きなモノの記録。

「クレッシェンド 音楽の架け橋」ドロール・ザハヴィ

音楽には言葉がない。言葉がないから解釈を強制しない。共感よりも共鳴。響き合うというのはとても純粋な感覚だ。世界で最も解決が難しいとされる紛争地域、パレスチナイスラエルの音楽家たちが奏でるラヴェルの「ボレロ」、パッヘルベルの「カノン」には、分断を結びつける手がかりがあった。

 

映画『クレッシェンド 音楽の架け橋』公式サイト|2022年1月28日(金)全国公開

「椿の庭」上田義彦

写真家・上田義彦が映画を撮った。妻と子供たちを撮り続けた彼の写真集「at Home」は忘れがたい一冊だ。写真も映画も記憶を留める装置。そんなことを思いながら観ていたら、切なくて、切なくて、切なくて。でも、それが人生。生きるということ。そして、やっぱり恐ろしいほどに美しい。美しさを捉えるというのはセンスだ。

椿の庭

「淪落の人」オリヴァー・チャン

「世の中は説明できないことだらけ。けれど、心持ちは自分で選べる」とその人は言った。境遇や人種、文化が違う人たちであっても、同じ夢をみることができる。この映画が感動的なのは、同じ夢を見ることで、どん底にあったお互いの人生がきらきらと輝き始め、お互いを思いやるやさしさに満ちていくところだ。人間っていいな。

映画「淪落の人」公式サイト

「ザ・ユナイテッド・ステイツ vs. ビリー・ホリデイ」リー・ダニエルズ

国家が何かを禁じる。その背景には、その物事に対する恐れ、とても不都合な真実が隠されている。多くのミュージシャンから曲を奪い、映画人を追放した「アメリカ」が、最も恐れた歌手はビリー・ホリデイで、最も恐れた曲は「奇妙な果実」であることは間違いない。「果実」とは、虐殺され、木に吊りさげられた黒人の「死体」であると知ったのはいつだったろうか。

映画『ザ・ユナイテッド・ステイツ vs. ビリー・ホリデイ』公式サイト

「ヤクザと家族 The Family」藤井道人

任侠、ヤクザ、暴力団、反社。時代によって変化した、その呼び名を並べるだけで、世間が彼らをどのように扱ってきたか、そして今、どのように扱っているのかがわかる。行き場のないはみ出し者たちが、ようやく見つけた「場」は、日本からどんどん消滅している。ただただ拠り所となる居場所が欲しかっただけの、途方に暮れる男たちのやるせなさが、ギュッと胸を締めつける哀歌。

映画『ヤクザと家族 The Family』| 大ヒット上映中