素晴らしかった! そこにある理不尽さに、悲しみに、弱さに、喜びに、やさしさに、温もりに、希望に、ずっと泣きそうだった。米インディーズのカリスマだとか、音楽ファンにはたまらないトラックの数々だとか、過去の名作へのオマージュだとか、タランティーノが絶賛だとか、そんなことはどうだっていい。映画とはパーソナルなもの。映画を無条件に信じ、愛し抜いたら、こんな奇跡のようなフィルムが生まれる。アレクサンダー・ロックウェル監督に最大の賛辞を送りたい。
素晴らしかった! そこにある理不尽さに、悲しみに、弱さに、喜びに、やさしさに、温もりに、希望に、ずっと泣きそうだった。米インディーズのカリスマだとか、音楽ファンにはたまらないトラックの数々だとか、過去の名作へのオマージュだとか、タランティーノが絶賛だとか、そんなことはどうだっていい。映画とはパーソナルなもの。映画を無条件に信じ、愛し抜いたら、こんな奇跡のようなフィルムが生まれる。アレクサンダー・ロックウェル監督に最大の賛辞を送りたい。
ミック・ジャガーやジョン・レノンよりもずっと先に、黒人音楽を白人社会に伝導したミュージシャンといえばエルヴィス。メンフィスの街で、ブルースやゴスペルから啓示を受ける衝撃は、まさしくビッグバン、ロックンロールの誕生といってもいい瞬間だった。粗野で、卑猥で、反道徳的。初期のロックンロールはひりひりするほどカッコイイ。
なんじゃこりゃぁあああって映画は、これまでもたくさん観てきたつもりだったけど、これはどんな映画よりも圧倒的だった(観る者を選ぶけど)。交通事故、チタン、少女、父、頭蓋骨、ショーガール、性行為、刺殺、エンジンオイル、消防車、妊娠、子宮、脊髄、胎児。それらがぐちゃぐちゃに、観る者などお構いなしに、スピーディーに展開していく超ドS映画。史上最高に壮絶な映画体験をぜひ。それにしても、それにしても。
ISISに襲われた記憶を描いた子供たちの絵が脳裏に焼きついている。イラク、シリア、レバノン、クルディスタン・・・。四六時中、銃声が鳴り響き、いつ命を奪われるかわからない。圧政、侵略、虐殺。想像すらできない極限と、まさしく隣り合わせで毎日を暮らす人たちがいる。何度も胸に刻もう。戦争における最大の犠牲者は、なぜ戦争しているのかさえわからない、ささやかな、ささやかな暮らしを営む、その人たちなのだ。誠実な映画は、いつも私たちの目を覚まし、目に見えぬ問題を喚起する。
「国境の夜想曲」2022年2月11日(金・祝)Bunkamuraル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次ロードショー!