ずっと映画のことを考えている

旧「Editor's Record」(2023.2.28変更)

「ギフト 僕がきみに残せるもの」クレイ・トゥイール

父親として、強さはもちろん、弱さをみせることが、とても大切なのだということを学んだ。というよりも、弱さをさらすこと、それ自体が強さなのだ。息子には、何を見せ、何を語り、何を遺してやることができるのか。そのことばかりをぐるぐるぐるぐる考えていた。愛ってすげえ。

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映画「ギフト 僕がきみに残せるもの」公式サイト|8/19(土)より全国順次ロードショー

 

「怪物はささやく」 J・A・バヨナ

孤独、不安、恐れ。誰しも胸の内に「怪物」が棲みついている。その「怪物」と闘い、また、その「怪物」に癒され、導かれながら、人生の最も困難な別れを乗り越えいていく少年を描いたファンタジックな物語。胸が張り裂けそうなほどに悲しく、そして、息をのむほどに美しかった。

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映画『怪物はささやく』公式サイト

「問いつめられたパパとママの本」伊丹十三

伊丹十三という人のスゴさを知ったのはずっと後になってからのことだ。ただ、彼が生きている間に、その仕事に少しでもリアルタイムで触れることができて、ほんとうに良かったなぁと思う。科学をテーマにしたこの一冊にも、彼の「超一流のうんちく」が散りばめられているけれど、うんちくが嫌味なく、すーっと入ってくるところに彼の天才がある。圧倒的な教養と知性。こんなに軽妙洒脱な人はもういないなぁ。

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問いつめられたパパとママの本|文庫|中央公論新社

 

「彼女の人生は間違いじゃない」廣木隆一

早朝、福島のいわき駅から高速バスに乗り込み、東京へと向かう。駅のトイレで着替えを済ませ、渋谷の雑居ビルにある事務所へ。やがて、呼びだしがかかると、スタッフの運転する車でラブホテルへ移動し、デリヘル嬢として働く。週末が終わると彼女は、昼はパチンコ、夜は酒を飲みながら、津波で死んだ母の思い出話を何度も繰り返す父親の待つ仮設住宅へと帰っていく。この映画はそんな日々をやさしく肯定する映画だ。「何かが欠落したまま、決して満たされることのない日々の暮らし」の中に、やがて光は射し込んでくる、そう静かに願う、希望の映画だ。

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映画『彼女の人生は間違いじゃない』公式サイト

「宇宙からの帰還」立花隆

これは目から鱗の一冊。あの立花隆が昭和58年に著した、宇宙飛行士へのインタビューをもとにしたノンフィクション。国家について、宗教について、神について、宇宙について。彼らの言葉によって明らかになるのは、科学というものの限界と、認識できるものしか認識できていない人間の、哀しく滑稽なまでの「小ささ」だった。がちがちに固まった価値観をぶち壊すためには、未知なる体験をするか、視点をぐんぐんぐんぐんあげて、世界の見え方、捉え方を変えるしかないのだ。

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宇宙からの帰還|文庫|中央公論新社