ずっと映画のことを考えている

旧「Editor's Record」(2023.2.28変更)

「どぶ」新藤兼人

新藤兼人による1954年の作品。黒沢明の「どん底」に匹敵する、戦後のルンペン街に暮らす人々の、貧しくもエネルギッシュな生活。それぞれの人物描写も素晴らしかったけど、この映画の見どころはなんといっても乙羽信子の演技と覚悟に尽きる。清純派から180度の転換。女優の開眼。終盤、娼婦となってお金を貢ぎ続ける知恵遅れの女の、優しさと切なさと無垢の愛に、胸がぎゅっと締めつけられた。

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