ずっと映画のことを考えている

旧「Editor's Record」(2023.2.28変更)

「バイプレイヤーズ ~もしも100人の名脇役が映画を作ったら~」松居大悟

安藤玉恵宇野祥平柄本時生、渋川清彦、でんでん、浜野謙太。この映画にも出ていたけれど、この辺の俳優さんの名前が連なっていると、映画の期待値がグンとあがる。映画を傑作たらしめるのは、バイプレイヤーたちにかかっているといっても過言ではない。この人も、その人も、あの人も! そんな風な映画体験がほんとうに楽しかった。

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映画『バイプレイヤーズ~もしも100人の名脇役が映画を作ったら』公式サイト

「ペトルーニャに祝福を」テオナ・ストゥルガル・ミテフスカ

私にだって幸せになる権利はある。この映画が問いかけるのは、そんなシンプルで、当たり前のことだ。それなのにペトルーニャに勇気づけられ、鼓舞されるのは、いかに女性が生きにくさを抱え、抑圧されながら生きているかの証でもある。うだつがあがらないと思っていた主人公が、どんどん強く、美しくなっていく。私たちの目を盲目にしているものはなにかと考えさせられる。

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映画『ペトルーニャに祝福を』公式サイト

 

「アメイジング・グレイス/アレサ・フランクリン」シドニー・ポラック(撮影)/アラン・エリオット(映画化プロデューサー)

何度か書いているけれど、人生で最も音楽に感動したのは、ハーレムの教会で聴いたゴスペルだ。今までまったく経験したことのない音楽がそこにはあった。それは癒しなんて生ぬるいものではなく「救い」そのものだった。魂の救済は、ゴスペルを歌い、神につながることでもたらされる。史上最高のディーバといっても過言ではないアレサ・フランクリンが、牧師だった父の前で、自らを育てた歌を、自らが育った教会で歌う。会場全体が歓喜し、涙し、生きている実感をわかち合う。彼女そのものが「神がもたらした奇跡」であることを証明する至上のライブドキュメンタリー。震える。

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映画『アメイジング・グレイス/アレサ・フランクリン』公式サイト

「ゾッキ」竹中直人・山田孝之・齊藤工

そういえば、得体の知れないヒトやモノをとんと見なくなってしまった。あの、驚きとも怖さとも異なる、自分では処理しきれない何かを飲み込まざるをえない「感覚」。そんな懐かしい感覚を存分に感じさせてくれる映画だった。すべてが解明され、説明され、評価されてしまう世界へのアンチテーゼ。「なに今の?」って瞬間がとっても愛おしくなってくる。

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映画『ゾッキ』公式サイト

「空に住む」青山真治

その生き難さ、満たされなさは、何によってもたらされるのか。誰によってもたらされるのか。共存すべきは他者ではなく、守るべきはプライドでもない。この映画が問いかけるのは、自らの意志で生きているかということ。生きるということは、自らの選択、その積み重ねなんだ。

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映画『空に住む』公式サイト | 5.1 デジタル配信/8.4 ブルーレイ&DVDリリース