ずっと映画のことを考えている

旧「Editor's Record」(2023.2.28変更)

「ローライフ」トム・フォンドル

冒頭からいきなりの目を覆いたくなる残虐シーンに、一体どうなることかと思ったけれど、物語が進めば進むほど、目が離せなくなり、次第にのめり込んでいった。タランティーノが熱狂した次世代のカルト映画。マスクを被った純度120%の眠れるヒーローが絶望の果てに見るものとは!? 一癖も二癖もある登場人物たちが織りなす痛快なバイオレンス・アクション。溢れる映画愛。心拍数あがるわー。

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ハピネットピクチャーズ - Happinet Pictures

「クマにあったらどうするか」語り手・姉崎等/聞き書き・片山龍峯

ただ木を植えればいいというわけではないようだ。針葉樹の林にはミミズ一匹おらず、それを食べて暮らす動物もいないから、生きた山とはいえない。と、アイヌ民族最後の狩人の姉崎等さんはいう。「クマは約束を守れるけれど人間は守れない」「クマが怖いという言葉が怖い」など、自然のともに生きてきた人の言葉に考えさせられることは多い。

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筑摩書房 クマにあったらどうするか ─アイヌ民族最後の狩人 姉崎等 / 姉崎 等 著, 片山 龍峯 著, 畠山 泰英 著

 

「シュガー・ラッシュ:オンライン」リッチ・ムーア&フィル・ジョンストン

子供と映画館へ。隣りの席で、腹を抱えて笑い、しゃくりあげて泣いていた息子をひきあいに出すまでもなく、手に汗を握り、胸が締め付けられるエンターテインメントを存分に堪能する。クリエイティブの根幹にある、多くの人たちを驚かせ、喜ばせたいという強い思い。限界を設けない、度を越えた、ディズニーの精神性、志の高さを、まざまざと思い知らされる。世代を超えるって、すごいことだ。

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シュガー・ラッシュ:オンライン|映画|ディズニー公式

「フジコ・ヘミングの時間」小松莊一良

幼い頃にスウェーデン人の父親と生き別れ、国籍のないまま、難民としてドイツへピアノ留学。世界的な音楽家たちから支持を受け、名声を掴みかけるものの、風邪をこじらせ聴力を失ってしまう。それでもなお、腐らず、諦めず、ピアノを弾き続けた彼女が奏でる音楽は、譜面通りでは再現できない、誰も真似ることのできない唯一無二のものだ。今でも1日4時間は練習し、捨てられた猫を育て、自分を捨てた父親と、決して誉めてくれなかった母親を愛する。彼女の音楽の美しさの秘密は、あまりに気高い暮らし方、純真で無垢な生き方にあった。ほぼノーカットの「ラ・カンパネラ」は圧巻。

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映画「フジコ・ヘミングの時間」公式サイト 2018年6/16公開

「現代秀歌」永田和宏

小説や、ましてや、エッセイとは異なり、詩歌のたぐいは、天賦の才がないと書けない。なので、歌を詠む人をとても尊敬している。例え、使い慣れた、私たちが日常よく使う言葉であったとしても、5・7・5・7・7のかたちに納める人が納めるだけで、物語(イメージ)が無限に広がるのはまさに詠み人の才によるものだ。大袈裟に、あるいは、簡単に言ってしまえば、いい歌とは宇宙なのだ。

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現代秀歌 - 岩波書店