ずっと映画のことを考えている

旧「Editor's Record」(2023.2.28変更)

「アウトレイジ 最終章」北野武

仁をもって義をなす、義によって仁を尽くす。結局のところ、「アウトレイジ」シリーズは、いずれも、義理や人情がまったく意味をなさない現代に抗いながら、頑なに「仁義」をつらぬき通そうとする男の物語だった。主人公・大友の「おとしまえ」には、孟子から続く儒教の思想、「死ぬことと見つけたり」の武士道の美意識が色濃く表れている。そして、それはきっと、芸人・ビートたけし、人間・北野武の美意識でもある。

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『アウトレイジ 最終章』Blu-ray&DVD 2018.4.24 ON SALE

 

 

 

 

「ブルーム・オブ・イエスタデイ」クリス・クラウス

ナチスの戦犯を祖父にもつ男とその祖父に祖母を殺された女。心に傷を背負ったまま、悲惨な過去を乗り越えようとする、かつてない愛の物語は、どこかほろ苦く、そして、切ない。私たちが決して忘れてならないことは、今、自ら為していることが、未来の子供たちの足枷になる可能性もあるということだ。

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映画『ブルーム・オブ・イエスタデイ』9月30日(土)よりBunkamuraル・シネマ他 全国公開

 

「万引き家族」是枝裕和

必死だった。超一流の俳優たちの、一つひとつの台詞、一つひとつの表情、一つひとつの仕草に、心がぐちゃぐちゃにかき乱され、物語についていくことに、ただただ必死だった。その根底にある「怒り」。それでいて、喜びも、哀しみも、楽しさも、喜怒哀楽のすべてが描かれ、力強く(容赦なく)伝わってきた。人間の強さと弱さ、美しさと醜さも。「誰も知らない」でカンヌに見いだされ、この「万引き家族」でパルムドールを獲った。「子供を撮る」という点において、是枝監督は、世界の映画史に名を刻む天才だと思う。傑作。本日、試写会にて。6月8日公開です。

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是枝裕和監督 最新作『万引き家族』公式サイト

 

「光」大森立嗣

まほろ駅前シリーズの原作者・三浦しをんの振り幅! じくじくと化膿したような過去の罪を共有してしまった幼なじみ3人の、どろどろと愛憎が渦巻いている感情と、ひりひりとした人間関係。暴力への欲望と連鎖。ヒトはもともとケダモノとして存在しているのか、それとも、ケダモノになってしまうのか、一体どっちなんだろう。

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映画『光』公式サイト 新宿武蔵野館、スバル座ほか上映中

 

「彼女がその名を知らない鳥たち」白石和彌

胸が張り裂けそうだ。「無償の愛」というものが、もしも本当にあるのだとしたら、きっとこんな風に、哀しくて、哀しくて、やりきれないものなんだろうと思う。ほとんどの人生はハッピーで終わらない。それでもなお、生きるに値するものがあるとするならば、誰かを愛し、誰かに愛されることだけなんだという「確信」と「祈り」が込められたような、とても傑出した映画だった。

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映画「彼女がその名を知らない鳥たち」公式サイト|4.25(水)Blu-ray&DVD Release