ずっと映画のことを考えている

旧「Editor's Record」(2023.2.28変更)

「ファング一家の奇想天外な秘密」ジェイソン・ベイトマン

ニコール・キッドマンの仕事の選び方はとても魅力的だ。女優にとって、ときに邪魔なものにもなりかねない「美しさ」や「華やかさ」をひょいと脱ぎ捨て、やむにやまれぬ絶望の淵で、それでも生きていく人間を演じたら、このひとの右にでるひとはいない。親と子という呪縛からの解放と自立。そして、素晴らしいキャスト。決して万人受けはしないだろうけど、私的には、いつまでも余韻の残るいい映画だった。

f:id:love1109:20170301001058j:plain 

株式会社アメイジング D.C.

 

 

「白い帽子の女」アンジェリーナ・ジョリー

どんなに仲睦まじい夫婦であったとしても、結局のところ、それぞれの孤独と向き合い、それを乗り越えねばならない過程があるということか(この映画を撮った後にこの二人が離婚したという事実がなんとも皮肉)。内面の表出。自己表現の極み。自分をさらけだすことを極限まで課したアンジェリーナ・ジョリーの鬼気迫る演技が痛々しくさえあった。表現者であり続けるということは、なんて凄まじいことなんだ。

f:id:love1109:20170228011409j:plain 

映画『白い帽子の女』オフィシャルサイト

「ヒップスター」デスティン・ダニエル・クレットン

母の海帰葬をするために集まった家族。三姉妹の兄が手を滑らせ、遺灰の入った壺を、海に落としてしまうシーンがとてもいい(結局、妹たちが見つけてくれるんだけど)。悲しみが癒されていくのも、家族がもう一度絆を深めるのも、ほんとうにささいなきっかけなんだよな。傑作「ショート・ターム」への助走ともいえる瑞々しさが全編に漂う、なんかいい映画。

f:id:love1109:20170223235437j:plain 

映画『ヒップスター』公式サイト|2016.7.30(土)より カリテ・ファンタスティック!シネマコレクション2016@新宿シネマカリテにてプレミア公開!

 

 

 

 

「流動体について」小沢健二

19年振りのシングルを緊急発売! というネットニュースに踊らされ、オッサン、滅多に行かない街のCD屋さんでゲット。そうそう! このリズムに、このメロディ。心が浮き立つ疾走感も、口ずさみたくなる軽やかさも、引き出しいっぱいのアレンジも、そして、そのまま文学になっている歌詞も。やっぱり小山田圭吾派ではなく、小沢健二派だな、オレは(どーでもいいけど)。としみじみ。去年は金沢にも来てました。名曲です。

f:id:love1109:20170221222434j:plain

小沢健二「流動体について」特設サイト

「ハドソン川の奇跡」クリント・イーストウッド

原題は機長のニックネーム「Sully」。この未曾有の航空機事故の映画について、事件そのものではなく、機長の葛藤に焦点を当てたところに、さすが、イーストウッドのセンスと見識がある。抑制された演技と演出。これはひとりの人間の、尊厳と誇り、そして、誠実さを描いた物語。やるべきことをやる。仕事とは。プロとは。この映画にはその答えがすべて描かれている。

f:id:love1109:20170218011943j:plain  

映画『ハドソン川の奇跡』オフィシャルサイト