人生は出会いの連続だ。良い出会いも、悪い出会いも、それが例え一瞬であったとしても、すべてはやがて、その人の人生の物語の一部となる。世界から孤立し、引きこもっていた42歳の陽子が、人と出会うことで痛みと闘い、勇気を絞りだして東京から青森へ向かう魂のロードムービー。菊地凛子、あの「バベル」の千恵子が重なる、圧巻の存在感だった。
『658㎞、陽子の旅』映画公式サイト/7月28日(金)全国順次公開
人生は出会いの連続だ。良い出会いも、悪い出会いも、それが例え一瞬であったとしても、すべてはやがて、その人の人生の物語の一部となる。世界から孤立し、引きこもっていた42歳の陽子が、人と出会うことで痛みと闘い、勇気を絞りだして東京から青森へ向かう魂のロードムービー。菊地凛子、あの「バベル」の千恵子が重なる、圧巻の存在感だった。
『658㎞、陽子の旅』映画公式サイト/7月28日(金)全国順次公開
人間は誰だってズルくて弱い。薄汚くドロドロした負の感情だって誰にでもある。そんな誰にも見せられないような鬱屈した感情を、そっと共有して、共感して、それでいて、お互いに嫌じゃない。むしろ、なんだか愛おしい。きっと、今も昔もそれが恋だ。オフビートでありながら、飄々と、でも、真っすぐな。主題歌がスピッツってのも出来すぎ。令和の青春映画もいいね。
冒頭。花畑を二人の少年が疾走するシーン。それだけでこの映画が、まぎれもない傑作であることがわかる。子供でもなければ大人でもない。思春期ならではの喪失。置き所のない身体と、やり場のない感情が、思いがけない「悲劇」を巻き起こす。言葉にできない悲しみ、想像を絶する苦しみを抱えながら、人は変わることができるだろうか。あるいは、変わらずにいることができるだろうか。観終えた後、久しぶりに言葉を失い、茫然とするしかない映画だった。
大人になるとわかる。あの頃、終わりがあると微塵も感じなかった、たわいもない時間が、いかにかけがえのない大切な時間であったかということを。また、たとえ親であったとしても、自分と同じように、悩み、迷い、もがきながら生きる一人の人間であったということも。父とふたりきりで過ごした11歳の夏。その一瞬一瞬が、あまりに眩しくて、せつなかった。愛という永遠、そして、せつなさについての大傑作。
寅さんの美学は「引き際」に表われる。誰よりも我儘で、往生際が悪いようにみえて、居てほしいときにすっと姿を消してしまう。そこに、自分ではなく、相手を慮るやさしさがある。慮る。このもはや死語になりつつある日本の、日本人の美徳を、最も可笑しく、哀しく体現するのが寅さんだ。そして、忘れちゃならない、都はるみの演歌が素晴らしすぎる第31作。