ずっと映画のことを考えている

旧「Editor's Record」(2023.2.28変更)

「波紋」荻上直子

この映画について、荻上監督は「私は、この国で女であるということが、息苦しくてたまらない」という言葉を寄せている。この社会に渦巻いている不安や苦しみは、得体の知れないもの、例えば、新興宗教にすがりつかねばならない多くの人間を生みだしている。自由であること、生きるということは、過酷だ。


映画「波紋」公式サイト 5月26日(金)公開!




「逃げきれた夢」二ノ宮隆太郎

ちゃんと生きるって難しい。やり過ごそうとしても、そうは問屋がおろさない。人は人として人と向き合わねばならず、人生のどこかで、その時は必ずやってくる。当たり障りのない言葉、その場限りのやさしさ。唯一、かすかな希望と思えるのは、それが誰かを救うこともあるということだ。しみじみ、いい映画だったなぁ。

 

映画『逃げきれた夢』公式サイト (nigekiretayume.jp)

「渇水」髙橋正弥

停水執行。すなわち、水道を止めるという行為は、例えルールであったとしても、少なからず命を危険にさらす行為だ。それがネグレクト(育児放棄)を受けている子供の家庭であった場合、より一層、事態は深刻となってくる。大人からも、社会からも分断され、見下され、無視される子供たち。この世の中に「確実に」存在している彼ら・彼女たちの声なき声を、映画は、繰り返し繰り返し、叫び続ける。

映画『渇水』公式サイト - KADOKAWA

「千夜、一夜」久保田直

年間で約8万人。警察に届けられる行方不明者の数は、そのまま、大切な人、愛する人が、ある日、忽然と目の前から姿を消してしまう数でもある。理由のわからない、そうした喪失と、人はどのように向き合い、時を過ごしていけるのか、あるいは、いけないのか。当代随一の女優、田中裕子、ここにあり。かつての樹木希林がそうであったように、その表情、仕草、一挙手一投足から決して目を離してはならない。


映画『千夜、一夜』公式サイト

ベストテン2023

2023年もあと2日。今年観た映画は62本。日々慌ただしく、往時の半分くらいになりましたが、それでも映画は観続けています。

さて、年末恒例のベストテンも今年で12年目。特に印象に残った映画は、

「お嬢ちゃん」二ノ宮隆太郎
「ベイビー・ブローカー」是枝裕和
「PLAN 75」早川千絵
「フラッグ・デイ 父を想う日」ショーン・ペン
「エゴイスト」松永大司
「逆転のトライアングル」リューベン・オストルンド
「ザ・ホエール」ダーレン・アロノフスキー
「ケイコ 目を澄ませて」三宅唱
Winny」松本優作
「小さき麦の花」リー・ルイジュン

観た順番で上記の10本です。

「悪いところは誰でも見つけられるけれど、いいところを見つけるのは、そのための目を磨いておかないとできない」とは黒澤明の大好きな言葉。

ライフワークにしているブログの映画記事も1254本を数えますが、1本たりとも批判していないというのが、私のちょっとした誇りです。

今年も1年間、本当にありがとうございました。
皆さんどうか良い年をお迎え下さい☆