ずっと映画のことを考えている

旧「Editor's Record」(2023.2.28変更)

「コロンバス」コゴナダ

好きなものを語るひとが好きだ。好きなものを語るとき、そのひとは、いちばんそのひとらしい顔をしている。モダニズム建築の宝庫として知られるインディアナ州コロンバス。建築を巡り、建築を語ることで、徐々に解されていく屈折した心。建築っていいな。ミル・レース・パーク、旧アーウィン・ユニオン銀行、ファースト・クリスチャン教会・・・。そこに込められているのは、祈りにも似た「切なる願い」なんだ。

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映画『コロンバス』オフィシャルサイト

「レ・ミゼラブル」ラジ・リ

権力をもった人間が絶対に失ってはならないものは想像力だ。想像力を失った人間は、警察だろうが、政治家だろうが、ギャングだろうが、同じ穴の狢だ。抑圧され、虐げられた者たちの怒りが爆発するラスト30分。サイレントマジョリティの声なき声に耳を傾けよ。大衆の狂気を覚醒させる鬱憤は、昨日も、今日も、明日も、この世界のどこかで蓄積されている。そんな現実をこの映画は突きつけてくる。

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映画「レ・ミゼラブル」公式サイト 2020年2/28公開

「幸せへのまわり道」マリエル・ヘラー

誰からも愛されるということは、誰よりも孤独であるということに等しい。ともすると、聖人君主として崇められるだけの国民的英雄の内面、優しさや穏やかさの中にある気高さ、寂しさを、トム・ハンクスが見事に表現している。名優は一瞬にして見る者を物語の中へ引きずり込んで離さない。いつも「やっぱりスゴイ」と思わせるということは、彼は常に「超えて」いるということにほかならない。

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映画『幸せへのまわり道』 | オフィシャルサイト| ソニー・ピクチャーズ |11.25(水)デジタル先行配信 / 12.23(水)ブルーレイ&DVD発売

「その手に触れるまで」ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ

正義は恐ろしい。誰かにとっての正義は、誰かにとっての悪になりうることを、絶対に忘れてはならない。そして、主義や信条、思想が異なったとしても、人と人は手を取り合えるということも。巨匠ダルデンヌ兄弟のカメラは、加担することなく、ただそこに「在り」続ける。そこに映し出されるのは人間の真実だ。

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映画『その手に触れるまで』公式サイト

「風の電話」諏訪敦彦

こういう映画は言葉にならない。言葉にできない。悲しみに寄り添うなんておこがましい。耐えがたい絶望を、その小さな身体で受け止める少女を、ただ茫然と見つめるしかできない。ドキュメンタリーではないが、フィクションでもない、そんな映画体験。ひとりでも多くの人たちの目に触れることを願わずにはいられない。

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映画『風の電話』公式サイト