ずっと映画のことを考えている

旧「Editor's Record」(2023.2.28変更)

「ガルヴェストン」メラニー・ロラン

アクション映画には哀しみが不可欠だ。闇社会で生きてきた男と、やむにやまれず家出した娘、どこにも行き場をなくした二人の、とても儚く、とても切ない、このロードムービーを観ながら考えていたのはそんなことだ。そして、逃亡劇は究極のラブロマンスを生む。現代のレオンとマチルダ。彼女はいつも美しいけれど、この映画のエル・ファニングは格別だ。

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映画『ガルヴェストン』公式サイト|2019年5月17日(金)ロードショー

「まく子」鶴岡慧子

風変わりな青年ドノが発する「誰かが、そう信じてほしいことを、俺は信じる」なんて、すごい台詞。みんながそんな風にやさしく生きられたなら、それはきっと幸福に満ちた世界となるに違いない。いつから大人になったのかなんて、まったくわからないし、今もって大人の自覚はないけれど、この映画のように、人を許し、他者を受け入れたときに見える景色は変わる、というのはホントのことだ。

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映画『まく子』| 2019年3月15日(金)テアトル新宿ほか全国公開

「ディア・ファミリー 〜あなたを忘れない〜」エリザベス・チョムコ

母親に忘れられるというのは、一体どんな気持ちなんだろうか。ほんの少し想像しただけでも、その驚きや悲しみ、ショックの大きさは計り知れないけれど、高齢化が進む今、世の中には母親に忘れられてしまう人たちが実に多く存在している。認知症の母をとりまく、父と、娘と、息子の物語。その考えや態度や感情の表わし方は異なる。けれども、それぞれに妻や母を思いやり、愛するさまが、本当に切なくやるせない映画だった。ヒラリー・スワンク、マイケル・シャノン、ロバート・フォスター、ブライス・ダナーの素晴らしいアンサンブル。

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ディア・ファミリー ~あなたを忘れない~ -NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン-

「ともしび」アンドレア・パラオロ

いかに危ういバランスの中で、私たちの日々の暮らしが成されているのかを、まざまざとみせつけられる、もはやミステリーと呼んでもいい人間ドラマ。台詞はもちろんのこと、物語の核心さえまったく明かされることのない演出は、伝説の女優シャーロット・ランブリングの圧倒的な存在感、演技力があればこそ。さらに、彼女自身の人生を思うとき、主人公の不安や孤独、悲しみや恐れ、日常の中のぽっかりと空いた空洞の大きさに、息が詰まりそうになる。

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映画「ともしび」公式サイト 2019年2/2公開

「こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話」前田哲

他人に迷惑をかけながら生きる、ということは、他人から迷惑をかけられても仕方がない、ということでもある。人と人とが関わりながら生きるということは、健常者であれ、障がい者であれ、そんな覚悟を決めるということだ。楽しくて、明るくて、滑稽でありながら、生きるって何かを問わずにはいられない、いのちを全肯定する上質なエンタテイメント。

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映画『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』公式サイト