マフィアの生まれた地、シチリア。大人たちが見て見ぬふりをし、誰もが口を噤んでしまう、歪みきった、汚れきった社会の中で実際に起きた凄惨な事件をベースに、ファンタジックに綴られた少年と少女のラブストーリー。心の底から人を想うこと、触れ合うことが、こんなにも強く、美しく、尊いものなのかと、改めて思い知らされる。
街から本屋さんがなくなることが嫌だ。背表紙のタイトルを眺めながら、気になる一冊を手に取り、手触りや匂い、また、中面から滲みでるものを身体いっぱい感じとる。そうして想像力を育んできた。未だ知らぬ世界との出会いを与えてくれる本屋という空間が、私たちの暮らしを、人生を、いかに豊かにするものなのか。この映画をみればよくわかる。
『マイ・ブックショップ』2019年3月9日(土)シネスイッチ銀座、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次ロードショー
手塩にかけて育てた自慢の息子が、ドラッグによって、いとも簡単に崩れていく。人は人を救えない。例え、父親であろうとも。想像もしなかった試練に対峙せざるを得なかった父親がそう悟ったときに、それでもなおできることは、息子とともにもがき、苦しみ、ひたすら待つことだけだった。なんど裏切られても、信じて、待つこと。それ以外にできることはないけれどそれこそが至上の愛なのだ。