残念ながら人間は、差別し、抑圧し、ときに迫害さえ厭わない生きものだ。そんな厳しい現実と闘うためには、LGBTであろうがなかろうが、自分の居場所を自分で探して獲得する必要がある。あなたを異常だと決めつける人間は、例えマジョリティーであったとしても、決して全員ではない。あなたの多様性を認め、受け入れる人や場所が必ずやあるはずなのだという、これは希望の映画だ。
フィッシュマンズの歌に、悪口ばかり言ってるから好きさ、という歌詞がある。価値観が合わないと辛いだけの悪態も、なんだかお互い楽しく感じてくると俄然、それは恋の予感となる。波長が合うというやつだ。キアヌ・リーブスとウィノナ・ライダー。いくつになっても無条件に大好きな、全編ほぼ二人だけが繰り広げる、皮肉、悪口、毒舌のオンパレード。会話劇の名作の誕生!
子が親を殺し、親が子を殺す。どんなに酷い事件であったとしても、そこにいたるまでの過程がある。どこかで、父を、母を、子を、救済するポイントが必ずあるはずなのだ。緊張感の途切れることのない、この背筋が凍るようなサスペンスが教えてくれるのは、子供が生まれたからといって決して完璧にはなれないこと、親であっても不完全な人間なのだという当たり前の事実。そして、その事実こそが恐ろしく、大きな悲劇を生むということだ。