演劇は身体の芸術だ。鴻上さんが書くように、目で読むだけでなく、口に出して初めて「身体と深い所で繋がる」んだと思う。古今東西の演劇の代表作からピックアップされた31の名セリフ。いずれも声に出されることで名作になった演劇の解説本になっている点もおすすめ。
演劇は身体の芸術だ。鴻上さんが書くように、目で読むだけでなく、口に出して初めて「身体と深い所で繋がる」んだと思う。古今東西の演劇の代表作からピックアップされた31の名セリフ。いずれも声に出されることで名作になった演劇の解説本になっている点もおすすめ。
世界には、ほんの一握り、いわゆる一般的な映画とはまったく異なる次元で、神々しいほどに美しく、観たあとに只茫然とするしかない映画を撮る天才がいる。例えば、レオス・カラックスやポール・トーマス・アンダーソン、あるいは、グザヴィエ・ドランのように。もはや、何がホントで、何が嘘かもわからない時代の中で、ずっと胸にしまっていた秘密を打ち明ける、死に憑りつかれた85歳の祖父と13歳の孫娘の会話とやり取りにこそ、なにか「確かなもの」が描かれていたように思えてならない。タイトルにある「ハッピーエンド」は、ミヒャエル・ハネケ監督による皮肉なのか、本音なのか。その答えは、私たちの想像力に委ねられている。
人生の最期の最期、それまでずーっと寄り添ってきた老夫婦が、キャンピングカーで旅をしながら、スクリーンに映し出される写真を眺めつつ、あのときはああだった、このときはこうだったと語り合う。なんて豊かな時間なんだろう。例え、一方が認知症で、一方が末期がんであったとしても。いずれ記憶や肉体が消え失せてしまおうとも、その瞬間、その瞬間は、確かにそこにあった。これは人生の価値を問ういつまでも余韻の残るとても良質な映画だ。