村上春樹は、とても誠実な書き手であると同時に、とても誠実な受け手でもあるということは、彼が翻訳した本を何冊か読めばすぐにわかるけれど、アメリカの作家が雑誌や新聞に発表した記事、あるいは、エッセイを、気の向くままにスクラップし、一冊にまとめたこの本を読むと、そのことをより一層実感することができる。例えば、復員後、一貫してヴェトナム戦争をテーマに作品を発表しているティム・オブライエンが書いた「私の中のヴェトナム」(胸に迫る内容!)などは、アメリカの同時代小説をずっと追いながら、熱心に読み込んでいないと、その重要性にもかかわらず、日本に紹介されることのないエッセイであると思うのだ。