ずっと映画のことを考えている

旧「Editor's Record」(2023.2.28変更)

「GQ JAPAN」2022年1月&2月合併号

淀川美代子さんの訃報に一抹の寂しさを感じていたところに、GQ JAPANの編集長である鈴木正文さんの退任を知った。いつも足を運ぶヘアサロンでは、いつの間にか雑誌はiPadで提供されるようになってしまったけれど、GQとCasa BRUTUSだけは紙の雑誌が鏡の前に置かれ、毎月必ずGQを手に取り、巻頭にある鈴木編集長のコラムから目を通すのが密かな楽しみだった。

最初に雑誌に夢中になったのは宝島だ。1992年、一般紙で初めてヘアヌードを掲載し、エロ化する前の宝島には、音楽や文学など、まさしく黄金期の80年代のポップカルチャーが溢れていて、高校時代、パンクロックに傾倒し、モッズカルチャーに憧れ、東京に住もうと決めたのもこの雑誌の影響だった。

話は脱線したが、いわば当時の宝島と同じように、ここ数年、どこにも書かれていないホンモノの政治や文化、貧困や差別、偏見について、深く教えてくれたのはGQだった。

GQといえば、ファッション誌の括りになるんだろうけど、その編集のディテールに据えられていたのは(例え小さく無名であったとしても)闘う者たちへの賛歌であり、その根幹にあったのは、鈴木正文という一人の人間の見識だった(と勝手に思っている)。

鈴木編集長が綴る文章にはいつも胸が熱くなったし、自分の思考に大きな衝撃と影響を与えた、忘れられないコラムがいくつかある。

見識とは「物事の本質を見通す、すぐれた判断力。また、ある物事についてのしっかりした考え、見方」と広辞苑にある。編集長が変わると、残念ながら、間違いなく雑誌は変わる。日本から見識のあるメディアがまた一つ消えそうなことがとても残念でならない。


鈴木編集長の最後の巻頭コラムは下記で読めます。

勇者とはだれか──GQ JAPAN編集長・鈴木正文
https://www.gqjapan.jp/.../article/20211122-editors-letter

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