ずっと映画のことを考えている

旧「Editor's Record」(2023.2.28変更)

「ジョン・F・ドノヴァンの生と死」グザヴィエ・ドラン

グザヴィエ・ドランと同時代を生きていることを映画の神様に感謝している。ドランは絶望を描きながら、そこに差し込む光を忘れない。孤独を描きながら、愛の美しさを喚起する。ナタリー・ポートマンに震え、キャシー・ベイツに慄き、スーザン・サランドンに絶句せよ。嗚呼、これが映画だ。

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映画『ジョン・F・ドノヴァンの死と生』公式サイト | 10/7(水)Blu-ray&DVD発売

「旅のおわり世界のはじまり」黒沢清

僕らを縛りつけて一人ぼっちにさせようとするもの。差別だったり、偏見だったり。それらをつくりだすのは、自分自身だったと気づいたとき、目の前の壁はガラガラと音を立てて崩れ落ち、世界がパッと広がっていく。気持ちが迷子になったときはウズベキスタンの街を彷徨う前田敦子を思い出そう。きっと何かが変わるはずだ。

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映画『旅のおわり世界のはじまり』公式サイト

「帰れない二人」ジャ・ジャンクー

時代が変われば人間も変わる。それでも、変わらない、変われない情によって翻弄される人々を描く。ジャ・ジャンクーがチェン・カイコーの「黄色い大地」に影響され、映画を志したことを知り、深い感慨を覚える。第五世代から第六世代へ。こんなにも壮大なラブストーリーを描ける国はやっぱり中国しかない。戻れない。帰れない。が、人生は続く。

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映画『帰れない二人』公式サイト

「最初の晩餐」常盤司郎

秘密を共有する。それは家族が本当の家族になるための儀式だ。その秘密は、ときにひとを悲しませ、喜ばせ、また、怒らせたりもする。良くも悪くもそんな風に気持ちを搔き乱すのは家族だけだ。あのひとのあの料理をもう食べることができない。ここちの良い切なさがひたひたと沁みてくるいい映画だった。

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映画『最初の晩餐』公式サイト

「リチャード・ジュエル」クリント・イーストウッド

「すべての情報はプロパガンダである」ことを忘れてはならない。イーストウッドの映画にはいつもハッとさせられるけれど(彼の映画はすべて遺言のようだ)、本作は誰もが情報を発信し、メディアを持ちうる時代の「警句」ともいえる作品だった。決して他人の言葉を鵜呑みにしてはならない。自らの眼で見て、耳で聞き、手で触れ、心で感じることだけが真実なのだと胸に刻みつける。

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映画『リチャード・ジュエル』オフィシャルサイト 5.20ブルーレイ&DVD発売 /レンタル同時開始 4.15デジタル先行配信開始