ずっと映画のことを考えている

旧「Editor's Record」(2023.2.28変更)

「ジョーのあした 辰𠮷𠀋一郎との20年」阪本順治

ボクサーが憧れるボクサー。辰𠮷𠀋一郎はやっぱり特別だった。1人の天才ボクサーを20年にわたって撮り続けた奇跡のドキュメンタリーは、そのまま人間・辰𠮷𠀋一郎の魂の記録でもある。辰𠮷は、弱く、それ以上に、強い。変わったようで揺るぎがなく、変わってないようで進化している。愚直なまでのボクシングへの情熱と家族への愛。シビれるなぁ。

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映画『ジョーのあした -辰吉丈一郎との20年-』 公式サイト

 

「ひそひそ星」園子温

科学技術の進歩が人間の感性を蝕むこともある。「遠い国への憧れや、銀河系の彼方へのロマンが失われ、どこでも隣り部屋に行くように簡単になることで、すべてが立体的でなく、平坦になった」という台詞は、劇中で描かれる未来のみならず、現実の世界でもすでに起こっていることだ。そして、もう一つ。園子温こそ、3.11以降の福島と真摯に向き合う、稀有な映画監督であることを忘れてはならない。

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映画『ひそひそ星』園子温最新作 2016/05/14公開

「ヤング・アダルト・ニューヨーク」ノア・バームバック

隠れた名作「イカとクジラ」のノア・バームバック監督の「らしさ」満載、オフビートでちょっぴりほろ苦い、ハイセンス・コメディ。20代のカップルと対比される40代のカップルの「昭和的」ズレ感が、滑稽でもあり、哀しくもあり、そして、愛おしかった。にしても、ナオミ・ワッツのヒップホップダンスは必見。最近の彼女はほんとうにいい仕事をしている。

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映画『ヤング・アダルト・ニューヨーク』| 12/21(水)セルBlu-ray&DVD発売決定! 12/23(金)TSUTAYA先行レンタルDVD開始!

ベストテン2016

2016年もあと2日。今年観た映画(DVD)は昨年より少なく108本でした。今年はいろんなことが起きましたが、例年にもまして、映画に救われたように思います。

さて。年末恒例、特に印象に残った映画は、

「きみはいい子」呉美保
「あん」河瀨直美
「海よりもまだ深く」是枝裕和
「悪党に粛清を」クリスチャン・レヴリング
「草原の実験」アレクサンドル・コット
ディーパンの闘い」ジャック・オーディアール
「ぼくとアールと彼女のさよなら」アルフォンソ・ゴメス=レホン
リップヴァンウィンクルの花嫁」岩井俊二
「恋人たち」橋口亮輔
「或る終焉」ミシェル・フランコ

観た順番で上記の10本です。今年初めて半数の5本が日本映画となりましたが、どれも本当に誠実な作品ばかりで、それぞれの手法は違えど、決して好ましいとはいえない環境の中、それでも惑わされず、自分たちが信じている映画と向き合う真摯な姿勢に、今こうして振り返ってみても、胸が熱くなります。

「どうでもよいことは流行に従い、重大なことは道徳に従い、芸術のことは自分に従う」とは小津安二郎監督の言葉。

というわけで、年越しの準備が完了し、今から実家へと向かいます。今年も1年間ありがとうございました。皆さんどうか良い年をお迎え下さい☆

 

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「裸足の季節」デニズ・ガムゼ・エルギュヴェン

5人姉妹それぞれの個性。互いの存在に寄り添い、ときに、ぶつかり合う関係が、刹那的で美しく、そして、もどかしい。描いたのはトルコ出身の女性監督。物語後半、ほんとうの自由を得るため、末娘が意を決して臨む闘いは、今なお、世界で虐げられ、蔑ろにされている女性たちに、真の勇気を与えるものだ。

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映画『裸足の季節』オフィシャルサイト