ずっと映画のことを考えている

旧「Editor's Record」(2023.2.28変更)

「世界で一番美しい少年」クリスティーナ・リンドストロム&クリスティアン・ペトリ

事実はいつもスキャンダラス。#MeToo運動を例に挙げるまでもなく、芸能の歴史は搾取の歴史であることを、どこか頭の片隅に置いておく必要がある。そして、それは決して女性だけでなく、男性もまた犠牲者であるということも。「ベルサイユのばら」のオスカルのモデルとなった少年が、世界一美しかったがゆえに払った代償はあまりにも大きい。美しさと孤独はつねに表裏一体だ。

映画『世界で一番美しい少年』公式サイト

「サマーフィルムにのって」松本壮史

無我夢中。好きという気持ちは、それだけで侵しがたく、最強で、何よりも尊い勝新太郎を愛してやまない女子高生の映画愛は、メガホンを握った瞬間に黒澤明と同格なのだ。あまりにキラキラと眩しすぎて、気がついたらのめり込んで、最後には手に汗を握ってた。ハダシとビート板とブルーハワイ。時々おばちゃんみたいな顔になる、伊藤万理華がサイコーにキュート。

8月6日(金)公開『サマーフィルムにのって』本予告 - YouTube

「スティルウォーター」トム・マッカーシー

マット・デイモンは特別な俳優だ。アクション、ドラマ、SF、コメディ、そのすべてにおいて代表作があり、超一級の演技をみせる。忘れがたい作品がいくつもあるけど、中でも群を抜いて圧巻の演技をみせているのが本作だ。名優はその存在だけですべてを物語る。怒り、焦り、悲しみ、喜び、安らぎ・・・。わずか2時間の映画の中に、娘を想うあまりに危うい父親の人生がすべてが凝縮されていた。

 

Universal Pictures Japan

「男はつらいよ 噂の寅次郎」山田洋次

コレコレコレ。とことんお調子者で、おっちょこちょいで、喧嘩っぱやくて、惚れやすくって、人情深い。それを取り巻き、脇を固める「とらや」の面々。寅さん22作目はザ・男はつらいよ的テイスト満載の隠れた名作だった。それにしてもマドンナ役の大原麗子が、美しすぎて、色っぽくて。昭和を代表する大女優の面目躍如。頭の中にぼんやりとあるイメージをはるかに超えていた。すげぇ、綺麗だ。

第22作 男はつらいよ 噂の寅次郎|松竹映画『男はつらいよ』公式サイト

「クライ・マッチョ」クリント・イーストウッド

かつて彼の映画に出演した俳優・渡辺謙イーストウッドの映画作りを「スタッフを信じて1日ずつカットを積み上げていく」と評した。監督50周年記念作品となる今作に垣間見えるのは、そんな丹精を込めた1カット1カットの丁寧さ、映画に対する絶えることのない、静かに燃えたぎる情熱だ。円熟味などという言葉が陳腐に思えるくらいイーストウッドは特別。90歳を超えた彼のロードムービーを観られることの幸せたるや!

映画『クライ・マッチョ』公式サイト