ずっと映画のことを考えている

旧「Editor's Record」(2023.2.28変更)

「500ページの夢の束」ベン・リューイン

「アイ・アム・サム」の衝撃。ファニング姉妹を追いかけてはや17年。あのダコタ・ファニングに、自閉症を抱えながらも豊かな想像力を持ち、機知に富んだスタートレック好きなオタク少女を演じさせた映画の神さまに感謝! 嗚呼、そうなのだ。どこかエキセントリックでチャーミングな、そして、そこはかとなく漂うインテリジェンス。久しぶりのハマり役、ダコタ・ファニングを観てるだけで十分に満足だけど、想像力を持つだけで人は生きていけるのだ、という希望を描くすごくいい映画だった。

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映画「500ページの夢の束」公式サイト 2019年4/3 DVD発売!

「止められるか、俺たちを」白石和彌

「欲望の血がしたたる」、「胎児が密猟する時」、「犯された白衣」、「処女ゲバゲバ」、「赤軍-PFLP 世界戦争宣言」・・・。改めて、すごいタイトルばかり。映画を武器に「革命」を起こせると本気で信じていた若者たちの、圧倒的な熱量を伴った青春が、その薫陶を受けた人たちの手によって現代に甦った。そうだ。映画が残る限り若松孝二は死なない。「お前は何をぶち壊したい?」と執拗に問いかけてくる。

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『止められるか、俺たちを』公式サイト 10月13日(土)よりロードショー

「華氏119」マイケル・ムーア

本当のところは思いのほか複雑だ。マイケル・ムーアにかかると、ヒラリー・クリントンも、そして、バラクオバマでさえも、ドナルド・トランプと同じ穴の貉に思えてくる。銃乱射事件を生き延びた17才のバイセクシャルの少女によるスピーチと沈黙。心揺さぶるその切なる願いが、なぜ国家には届かないのか? 支持率の低かったはずのトランプがなぜ大統領で居続けられるのか? そのカラクリの一端が浮き彫りになってくる。

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映画『華氏119』公式サイト

 

 

「タリーと私の秘密の時間」ジェイソン・ライトマン

忘れないでおきたいのは、限界を超えて頑張り続けるよりも、「助けて!」と声を上げて叫ぶ方が大切なときもある、ということだ。子供への愛情が深いがゆえに完璧を求め、自らを蔑ろにしてしまう、痛々しい母親の性を、名女優シャーリーズ・セロンがまたもや体当たりで快演。母親のための映画と思いきや、これは子育てしてる(気になってる)父親が観るべき映画。なにゆえ子供は「パパ〜」ではなく「ママ〜」なのかがよくわかる。

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映画『タリーと私の秘密の時間』 | 大ヒット上映中!

「Vision」河瀬直美

河瀬直美監督が撮る自然はなぜこうも神がかっているのか。とりわけ生まれ故郷でもある「奈良」を撮る彼女の視線は別格だ。私たちの「いのち」とゼッタイに切り離すことのできない自然の中で生きること。まるで神話のような物語の中で、自然と正面から対峙する人間が真摯に描かれる。ジュリエット・ビノシュの存在感。やっぱりすごい。

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映画『Vision』公式サイト 6月8日(金)全国ロードショー