「アイ・アム・サム」の衝撃。ファニング姉妹を追いかけてはや17年。あのダコタ・ファニングに、自閉症を抱えながらも豊かな想像力を持ち、機知に富んだスタートレック好きなオタク少女を演じさせた映画の神さまに感謝! 嗚呼、そうなのだ。どこかエキセントリックでチャーミングな、そして、そこはかとなく漂うインテリジェンス。久しぶりのハマり役、ダコタ・ファニングを観てるだけで十分に満足だけど、想像力を持つだけで人は生きていけるのだ、という希望を描くすごくいい映画だった。
忘れないでおきたいのは、限界を超えて頑張り続けるよりも、「助けて!」と声を上げて叫ぶ方が大切なときもある、ということだ。子供への愛情が深いがゆえに完璧を求め、自らを蔑ろにしてしまう、痛々しい母親の性を、名女優シャーリーズ・セロンがまたもや体当たりで快演。母親のための映画と思いきや、これは子育てしてる(気になってる)父親が観るべき映画。なにゆえ子供は「パパ〜」ではなく「ママ〜」なのかがよくわかる。
河瀬直美監督が撮る自然はなぜこうも神がかっているのか。とりわけ生まれ故郷でもある「奈良」を撮る彼女の視線は別格だ。私たちの「いのち」とゼッタイに切り離すことのできない自然の中で生きること。まるで神話のような物語の中で、自然と正面から対峙する人間が真摯に描かれる。ジュリエット・ビノシュの存在感。やっぱりすごい。