ずっと映画のことを考えている

旧「Editor's Record」(2023.2.28変更)

「宇宙人のあいつ」飯塚健

オリジナルの脚本であること。氣志團が主題歌を歌っていること。宇宙人の物語であること。グチャグチャてんこ盛りであること。叫びたいくらいに純真であること。それでいて、決して重くないこと。そして、家族の普遍的な愛の映画であること。そのすべてがグッとくる、とても気持ちのいい作品だった。すごく好き。こんな日本映画がもっと増えてほしいなと思う。

映画『宇宙人のあいつ』公式サイト|5月19日(金)公開

「LOVE LIFE」深田晃司

深田監督の映画はいつも痛い。ひりひりする。触られたくない傷口をゆっくりグリグリされるような痛みがある。人間のエゴ、狡さや弱さ、赦しがたいことを乗り越えてたどりつく「境地」。LOVE LIFEが、理屈や言葉ではなく、映画という表現、圧倒的な説得力をもって提示される。

 

映画「LOVE LIFE」公式サイト

「あしたの少女」チョン・ジュリ

人間は目的を見失いがちだ。というよりも、見失ったふりをしているうちに、感覚が麻痺してしまい、やがて完全に見失ってしまう。麻痺を助長させるのは、学校であり、企業であり、それらで構成されている社会そのものだ。そんな社会の中で、唯一ただ独り、「間違っていることは間違っている」と叫び続ける、孤高の刑事だけが哀しいほど正当で美しかった。

あしたの少女 | Rights Cube

「インスペクション ここで生きる」エレガンス・ブラットン

これは果たして美談なのか。なんとなくモヤモヤする。1万5千人ものトランスジェンダーが所属するといわれるアメリカの軍隊。それはつまり、社会から排除された「彼ら」が、そこでしか生きられないことの証しでもあるからだ。ただ、ありのままにそこに在ろうとするだけなのに、血を吐くような苦しみに耐え、自らを偽り続けなければならない世界が、今も確実に存在している。

 
映画『インスペクション ここで生きる』オフィシャルサイト 2023年8/4公開

「ひかり探して」パク・チワン

たった一人でいい。たった一人、理解し、寄り添ってくれる人がいるだけで、人は希望を持って生きていける。環境でも場所でもなく、最後の最後、人の支えるなるのは、やはり人なのだ。そして、傷ついたことのある人ほど、人にやさしくなれるというのも本当だ。誰かにとって寄り添える人でありたい。

 
SUMOMO|映画「ひかり探して」 | Official