Editor's Record

観たモノ、読んだモノ、聴いたモノ。好きなモノの記録。

「ピータールー マンチェスターの悲劇」マイク・リー

ケン・ローチともう一人、イギリスには、マイク・リーがいることを忘れてはならない。一大スペクタクル。国の行く末を左右した事件を、その国を代表する監督が撮ると、それはやっぱり「特別な映画」となる。非武装市民6万人を相手に、騎兵隊はサーベルを振り上げ、軍隊はライフルで襲いかかる。なぜ統治する者は民衆を恐れるのか? 恐れざるをえないのか? 21世紀になってなお繰り返される武力弾圧はなぜ起こるのか? そんな本質的な問いかけが、終始一貫、ずっと貫かれている。

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映画『ピータールー マンチェスターの悲劇』公式サイト

「命みじかし、恋せよ乙女」ドーリス・デリエ

命みじかし恋せよ少女/朱き唇褪せぬ間に/赤き血潮の冷えぬ間に/明日の月日のないものを。嗚呼、なんて美しい日本語。黒澤明の「生きる」で志村喬が歌った「ゴンドラの唄」を口ずさむ樹木希林と、彼女が遺作で発する「あなた、生きてるんだから、幸せになんなきゃダメね」という台詞を聞くだけでも一見に値する(しかも、それが小津安二郎の定宿であった「茅ヶ崎館」で繰り広げられるとは!)。それにしても、いたるところに現われる、ドイツ人であるドーリス・デリエ監督の日本文化への造詣の深さたるや。溜息がでる。

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映画『命みじかし、恋せよ乙女』公式サイト

「サマーフィーリング」ミカエル・アース

この映画が「アマンダと僕」のミカエル・アース監督の作品だということを観終わってから知った。繰り返し「喪失」を描くこの映画監督は、夏の木漏れ日、山々の緑、湖で泳ぐ人々・・・、それから、夕景も、夜景も、過ぎ去っていく風景を絵画のように美しく描く。光と色彩。まるでエリック・ロメールの再来。これぞ、フランス映画の正当なる系譜だ。

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映画『サマーフィーリング』オフィシャルサイト

「ジョーカー」トッド・フィリップス

果たして、「ザ・マスター」以上の映画に出会えるのかと思っていたけれど、怪物ホアキン・フェニックス、ここに極まれり。心・技・体、そのすべてにおいて凌駕していた。ここまでくると、決して大袈裟な話ではなく、もはや神の領域。語るべき言葉さえも見つからない。あの笑い、あの肉体、あの狂気のダンスを、一生忘れることはないだろう。兄リヴァー・フェニックスの言葉を口にしたアカデミー賞の受賞コメントも本当に感動的だった。社会の理不尽と鬱屈の化身。デ・ニーロを超えることで、アーサーはあのトラヴィスと同じく伝説となった。

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映画『ジョーカー』ブルーレイ&DVDリリース

「さらば愛しきアウトロー」デヴィット・ロウリー

圧巻。脱帽。痛快。82歳のロバード・レッドフォードが、自らの引退作に、足を洗えない銀行強盗を描く、この作品を選んだなんて、なんと粋なこと!(しかも監督には新鋭監督をチョイス)可笑しくて、哀しくて、とてつもなく艶っぽい。「問題は僕がどこにいて何をしていようと、子供の頃の僕が今の僕を見て誇りに思うかどうかだ」って台詞を吐く、チャーミングな爺さんに終始心を奪われっぱなしでした。

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映画『さらば愛しきアウトロー』公式サイト