Editor's Record

観たモノ、読んだモノ、聴いたモノ。好きなモノの記録。

「こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話」前田哲

他人に迷惑をかけながら生きる、ということは、他人から迷惑をかけられても仕方がない、ということでもある。人と人とが関わりながら生きるということは、健常者であれ、障がい者であれ、そんな覚悟を決めるということだ。楽しくて、明るくて、滑稽でありながら、生きるって何かを問わずにはいられない、いのちを全肯定する上質なエンタテイメント。

f:id:love1109:20191018014723j:plain 

映画『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』公式サイト

「シシリアン・ゴースト・ストーリー」ファビオ・グラッサドニア/アントニオ・ピアッツァ

マフィアの生まれた地、シチリア。大人たちが見て見ぬふりをし、誰もが口を噤んでしまう、歪みきった、汚れきった社会の中で実際に起きた凄惨な事件をベースに、ファンタジックに綴られた少年と少女のラブストーリー。心の底から人を想うこと、触れ合うことが、こんなにも強く、美しく、尊いものなのかと、改めて思い知らされる。

f:id:love1109:20191017004325j:plain 

映画「シシリアン・ゴースト・ストーリー」公式サイト

「マイ・ブックショップ」イザベル・コイシェ

街から本屋さんがなくなることが嫌だ。背表紙のタイトルを眺めながら、気になる一冊を手に取り、手触りや匂い、また、中面から滲みでるものを身体いっぱい感じとる。そうして想像力を育んできた。未だ知らぬ世界との出会いを与えてくれる本屋という空間が、私たちの暮らしを、人生を、いかに豊かにするものなのか。この映画をみればよくわかる。

f:id:love1109:20191011010549j:plain 

『マイ・ブックショップ』2019年3月9日(土)シネスイッチ銀座、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次ロードショー

「斬、」塚本晋也

映像美。すごい映画というのは画面をひと目みるだけでわかる。一瞬たりとも気を抜けず、一息もつけない緊張感。人を殺める宿命を背負った武士の「業」を容赦なく抉っていく。現代の日本で、これほどまでに切れ味の鋭い、真のサムライ映画が撮られたことの奇跡。日本が世界に誇る、池松壮亮という役者、塚本晋也という監督の底力をまざまざと見せつけられる。

f:id:love1109:20191009014820j:plain 

映画「斬、」オフィシャルサイト | 2019年9月4日(水)Blu-ray&DVDリリース

「夜明け」広瀬奈々子

尋常ならざる、神々しいほどの、圧倒的な存在感。世界を驚かせた「誰も知らない」や、欲望と狂気の「ディストラクション・ベイビーズ」に勝るとも劣らない柳楽優弥がここにいる。嗚呼、生きることは、こんなにも残酷で、切なくて、危ういけれど、確かなものでもある、ということを感じさせてくれる大傑作。美談は美談で終わらない。光の中にも闇はあるし、闇があるから、光が射し込んでくるのだ。

f:id:love1109:20191004014501j:plain 

映画『夜明け』公式サイト