説明不要の代表作「竜馬がゆく」は「龍馬の伝記を書こうと思ったわけではなく、龍馬の人柄を書こうと思っただけのことだった」という司馬さんの言葉がなんだかとても感動的だった。なんでも「ものごとをつくるのは、結局は、つくる人の魅力であり、ものをつくっていく場合の魅力とは何だろう」というのが、あの小説のたった一つのテーマだったのだという。坂本龍馬であれ、勝海舟であれ、吉田松陰であれ、近藤勇や土方歳三であれ、司馬遼太郎はすべて、その人間に惚れこみ、人間を書いている。だから私たちは、彼の文章に、言葉に、魅せられるのだ。