「あのとき、ヒロシマの上空五百八十メートルのところに、太陽が、ペカーッ、ペカーッ、二つ浮いとったわけじゃ。頭のすぐ上に太陽が二つ、一秒から二秒のあいだ並んで出よったけえ、地面の上のものは人間も鳥も虫も魚も建物も石灯籠も、一瞬のうちに溶けてしもうた。根こそぎ火泡を吹いて溶けてしもうた。屋根の瓦も溶けてしもうた」という方言まじりの描写は、何よりもリアルに原爆のおそろしさを想像させる。丸谷才一が評したように、この戯曲は「戦後日本の最高の<喜劇>」であり、そのすごさは涙のなかにちゃんと「笑い」があるという点だ。