あとがきの「企業がむだなものに投資できる時代がまた訪れるように、と願わずにいられない」という言葉がなんだか妙に沁みた。その後にもよしもとさんは「お金のことだけ考えたらしないほうがいいことでも、人間にはしたくてしてしまう楽しいことがあるのだ」と続けた。街のやさしさはきっと、そうした楽しさによって醸成されるものだ。彼女の小説をたまに読むと気持ちがやわらかくなる。この本にでてくるビストロの料理があまりに美味しそうなので「ラ・ヴィータ」(金沢のリストランテです)に行ったら、ほんとうにしあわせな気持ちで胸がいっぱいに満たされた。美味しいもののチカラって偉大だ。