雑誌
タンザニアの野生動物や、そこで暮らす人々の生活を、鮮やかな色彩と素朴なタッチで描く「ティンガティンガ」の絵画に一瞬にして心を奪われる。また、同じエリアの、呪術的な意味合いを持ちながら今に伝わる木彫・マコンデ彫刻にも独特の雰囲気があった。そ…
昨日の柳宗悦の言葉に続き、偶然にも今日は「「無垢」というものに対する感受性、巧まざる部分に関しての感性が、日本にはずっとあるんだと思います」という画家・山口晃さんの言葉に出合った。衒いのない純粋なものを慈しむ視点。日本美術の多面的な表現を…
およそ「サライ」らしからぬ表紙が目に留まって購入。よくよく考えてみると、生きていれば、ウォーホルは84歳、リキテンスタインは89歳になる。「ポップ」なのに色褪せないというのは本当にすごい! また、ジャンルも、話も変わるけど、草間彌生なんかの作品…
小津安二郎に憧れて北鎌倉によく足を運んだ。建長寺で折り返す、鎌倉五山を巡るコースがお決まりで、あじさい寺と呼ばれる明月院は、私が最も美しいと感じる寺だ。「もやい工藝」店主・久野恵一さんの「この町に暮らすには、理念が必要なんじゃないかな」と…
ファッション & カルチャー誌が「食」をテーマにするというのは、とてもいい編集方針だなぁと思う。物質としての商品のカッコよさには、もはや限界があるんじゃないか、と感じるからだ。カッコよさは、どんなものを身につけるかではなく、どんな生き方をす…
「打席に入ったとき、何かやりそうな期待をさせて、その期待に応える。そんなバッターに僕はなりたいです」。1992年、星稜高校の教室で語った夢を、彼は見事に実現した。巨人からヤンキース、エンゼルス、アスレチックス、レイズへ。「命をかけてがんばりま…
例えば、鉄腕アトムが、後に彼を捨てることになる天馬博士が、交通事故でなくなった息子の身代わりに作ったロボットであること。手塚治虫の描くキャラクターには、逃れられない宿命のようなものがあり、彼らは人間の小さな力ではどうにもできない不条理に、…
「勝手にしやがれ」のジャン=ポール・ベルモンドのフェドーラ帽、「さらば青春の光」のフィル・ダニエルズの軍用パーカ、「ストレンジャー・ザン・パラダイス」のジョン・ルーリーのアーガイルのカーディガン、「トレインスポッティング」のユアン・マクレ…
目下、うちの息子(満二歳)を虜にするこの男。仕事をえり好みせず、誰とも分け隔てなく接し、TPOに合わせてどんな服も着こなし、笑顔を絶やすことなく、日々の苦労から人々を解き放つ。史上最高にして現役のダンディ、という野村訓市さんのミッキー論に強く…
冨永昌敬が語る大島渚、入江悠が語る溝口健二、黒沢清が語るスピルバーグ。そして、長谷川和彦と大根仁の対談! エッジの効いた雑誌はさすがにエッジの効いた特集を組む。中でも「かつて木下惠介という本物の映画人がいて、本物の映画を作っていたことを知っ…
ここ10年の TV ドラマの最高傑作は「ありふれた奇跡」だ(と信じている)。主演した加瀬亮の言葉を借りるなら、山田太一はいつも「生きにくさを感じたり、躓いたり、息が詰まったり、立てなくなったりした人」に寄り添っている。人間の無力さを肯定すること…
某書店のレジ袋に書かれている「本との出逢いを大切にします」という言葉がとても好きだ。東京にはいたるところに古本屋があり、学生の頃、暇に飽かせ、まさに「出逢い」を求めて入り浸っていた。本棚に並ぶ背表紙をひたすら目で追い、ピン! ときた本に手を…
面白い街には、面白い人がいる。間違いない。愛すべき店には、愛すべき人がいる。ということも、取材を通していつも感じていることだ。タウン誌の大切な役割の一つとして、街の息づかいと、そこで暮らす人間の熱を伝えることがある。積み重ねて300号。改めて…
Keith が語る「ロールの部分が大事だった。そっちのほうが難しいんだ。ロックなんてお茶の子だ。でもロールは全然別の次元にある」という言葉がよくわかる。ロックは様式でありロールは魂。これは理屈ではなく感覚の問題なのだ。 ロッキング・オン・グループ…
この一冊を読むと、渋谷PARCO が「ものを集めて売る場所」ではなく「ものを生みだす場所」であり続けていることがよくわかる。だから人を惹きつけるのだ。「商売に関係がないところから生まれてきたものにはなかなか死なない強さがある」というのは糸井重里…
田舎から上京した者のシンパシーからか、学生だった頃、下宿先の枕元にはいつも寺山修司のボロボロの文庫本があった。「私の墓は、私のことばであれば、充分。」という絶筆から30年。俳句であれ、短歌であれ、エッセイであれ、戯曲であれ、その言葉には今も…
モノを選ぶ。誰かがいいと言ったり、流行ったりしているモノじゃなく、とにかく自分かいいと思ったモノ。感情に訴えかけてくるモノ。審美眼はまず「自分に自信を持つこと」に始まり、モノをとことん愛することで磨かれる。モンゴ。自らの価値観でモノを蒐集…
コストを気にすることなく「良いもの」を作れば「良い結果」が得られるとどんな企業も信じていた時代。アメリカが最も華やかだったゴールデンエイジ、50's は、アメリカという国が最も純粋だった時代でもある。カルチャーが生まれる時代には心躍るようなワク…
誌面に登場するのは「おもに昭和戦後を代表し、また昭和戦後の時代精神をつくった」100人。その半数強が明治生まれで、彼らは「老人になることを恐れてはいない」と作家の関川夏央は書く。その生き様が表われた肖像写真はいずれも圧巻。その顔に、その佇まい…
ワン、ツー、スリー、フォーという Paul のカウントダウンから始まり、喉が張り裂けそうな John のシャウトで終わる。発売から50年を経てもその瑞々しさを失わないデビューアルバムのあまりのクオリティーの高さに改めて感動する。100年後、200年後にも残る…
メディア理論家のダグラス・ラシュコフによる「これ以上生産性を上げる必要なんかない」という主張がとても興味深かった。もっと食え、もっと消費しろ、そうすれば雇用も増えるはずだ、という考え方は、今の社会システムを維持するための当座しのぎに過ぎず…
「見習う」ということだけで受け継がれてきた日本の芸道。現存する世界最古の古典演劇といわれる能楽も、600年以上経てなお、人から人への伝承のみで、当初の「形」をほぼそのまま守り続けているという事実に驚く。志を継承する芸道に日本文化の粋が表われる…
日本に現存する最古の芝居小屋「旧金毘羅大芝居」のあまりの美しさに息を呑む。身近に感じる役者の息遣い、客席から沸きあがる歓声。泣いて、笑って、驚いて。故・中村勘三郎が四国・香川にあるこの小屋に歌舞伎の理想をみていたことがよくわかります。別冊…
若冲が40歳代のほぼすべてをかけて描いた「鳥獣花木図屏風」。およそ200年以上も前に描かれたとは思えないこの大作が「生きとし生けるものすべてに仏性が宿る」という言葉を象徴した仏画であることを知る。仏画をこんなにも楽しくアヴァンギャルドに描いた彼…
日常と祝祭。ハレとケ。人びとの暮らしの中に、脈々と受け継がれてきたもの。そんなものに、わずかでも触れたという確信が、その旅を豊かなものにしてくれる。どこか優しい土地の優しい人たちに会いに行く。そんな旅をしたくなる一冊です。 Brutus | マガジ…
瀬々敬久の「ヘブンズストーリー」も、山下敦弘の「苦役列車」もまだ観れていない。黒澤清の「リアル〜完全なる首長竜の日」に、吉田大八の「桐島、部活やめるってよ」、沖田修一の「横道世之介」、石井裕也の「舟を編む」はゼッタイに見逃したくない。宮藤…
第一線から退いた中山雅史の特集号。岡田武史の「勝負の懸かった試合では外せなかった」や、フィリップ・トゥルシエの「彼はピッチの上で死ねる選手だ」など、過去の指揮官から寄せられた言葉がすごい。23年の現役生活。彼の風貌の変遷には、止まることのな…
日本酒はネーミングが面白い。また、パッケージのデザインが楽しい。同じ産地、同じ品種でも、造り手が異なればまったく違うワインとなるように、自らの魂を吹き込むように杜氏が作りだす味わいは千差万別で、そこには蔵元のプライドが溢れている。これはな…
「我々を最も基本的な部分で結びつけている絆は我々がみなこの小さな惑星に暮らしているという事実なのです」というのが、今から50年前のアメリカ大統領の言葉だ。その後、人類は、着陸した月面から地球を眺めることに成功はしたけれど、その絆はどんどん薄…
特別付録として緊急復刻された中村勘三郎の写真集。全国の芝居小屋を一緒に廻った「座付写真家」篠山紀信さんの写真が素晴らしい。喜怒哀楽。いかに命を輝かせながら「今でなければできない歌舞伎」を創り上げてきたかがよくわかる。当代隨一の千両役者。失…