ずっと映画のことを考えている

旧「Editor's Record」(2023.2.28変更)

「あの頃。」今泉力哉

お揃いのキャップとTシャツ姿で「恋ING」を熱唱する彼らがカッコよくみえる。好きなものを好きと断言する人たちは、どこまでも純粋で、まっすぐで、アンポンタンだ。かつて、ヒロトが言った「馬鹿なら馬鹿なほどカッコええ、駄目なら駄目なほどカッコええ、そういう世界」。そういう世界は確実にあるのだ。

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映画『あの頃。』公式サイト

「おろかもの」芳賀俊・鈴木祥

聖人君子なんてどこにもいない。自分勝手で、嫉妬深くて、狡賢くて。そんな人間のドロドロした部分を描きながら、どこかすっと救いの手を差し伸べるような、そんな希望を感じさせる映画が好きだ。兄の浮気相手と妹という共犯者たちを「ガンバレ!」と応援したくなる、なんだか不思議な感覚の日本映画。

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おろかもの | 株式会社ミカタ・エンタテインメント

「泣く子はいねぇが」佐藤快磨

多くの大人は、ことのほか弱く、だらしなく、いい加減であるということを知ったのは、自分が大人になってからだ。そのことにガッカリするのではなく、どこかホッとしたのは、自分もまたそうであるからだ。親になるということが、完璧な人間になることではないということを、この映画は哀しみと一緒に教えてくれる。不完全な人間でも、もがいて、悩んで親になる、素晴らしきこの世界。

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映画『泣く子はいねぇが』| 11月20日(金)公開

「ぶあいそうな手紙」アナ・ルイーザ・アゼヴェード

すべては「寛容であること」から始まる。人生の終盤を迎えた視力を失いつつある78歳の独居老人と、無鉄砲で危なっかしい23歳のブラジル娘が、かかわりあうことで、互いに影響され、心を開き、徐々に意識が変わる姿は、とても感動的だった。敬意さえ失わなければ、世代や性別に関係なく、人と人は共鳴できる。そして、いくつになっても人は変われる。というのは希望だ。

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映画『ぶあいそうな手紙』公式サイト | 7/18(土)より、シネスイッチ銀座ほか全国順次公開

「ようこそ映画音響の世界へ」ミッジ・コスティン  

知られることのない、数えきれない人たちの映画愛によって、映画の歴史が積み重ねられていることを、改めて痛感し、心の底から感動した。映像と音響。いわば映画の1/2を占める映画音響について真摯に向き合ったドキュメンタリー。ルーカス、スピルバーグ、コッポラなどなど、巨匠たちが語る言葉には敬意と賛辞が溢れ、その価値が示されただけで大きな意義がある。映画を愛するすべての人へ。映画音響の名シーンをつなぎ合わせた(それは映画史の名シーンでもある)ラストシーンは圧巻。胸が高鳴る。

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映画『ようこそ映画音響の世界へ』オフィシャルサイト