ずっと映画のことを考えている

旧「Editor's Record」(2023.2.28変更)

「宇宙でいちばんあかるい屋根」藤井道人

何を成し遂げたかよりも、何をやり残したのか、何を後悔しているかの方が、人生において最も大切なことが浮かび上がってくるように思えてならない。これから先、桃井かおりの薫陶を受けた映画として、天才・清原果耶の一つの分岐点となるであろう作品から感じたことはそんなことだ。

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映画『宇宙でいちばんあかるい屋根』公式サイト・先行デジタル配信中

「宮本から君へ」真利子哲也

この映画を「ゴツゴツした魂のかたまりの岩を勢いで積み上げ固めた爆弾ようです」と原作者・新井英樹は書いた。泣いて、怒って、叫んで、笑って。そうした感情を生みだすものが、理屈ではなく本能であるとしたら、本能はいつ噴火するかわからないマグマの吹き溜まりのようだ。それにしても、俳優という仕事はスゴイ。ここまで人間は感情を噴きだせるものかと、池松壮亮蒼井優に心からの拍手を送りたい。

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https://miyamotomovie.jp/

「ポルトガル、夏の終わり」アイラ・サックス

女優は気高くなければならない。キャサリン・ヘプバーン、グレース・ケリー、グレタ・ガルボ、ハリウッドの黄金期を支えた女優は例外なく気高い。女優が女優を演じるためには、カトリーヌ・ドヌーヴ然り、わがままで、誇り高くなくてはならない。イザベル・ユペールがフランスの至宝と呼ばれるのは、その薫りを感じさせる稀有な女優であるからだ。好き勝手に愛し、愛され、生きてきて、最後の最後まで儘ならない。それでも人生は美しく、そして素晴らしい。イザベル・ユペール、ここにあり。

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映画『ポルトガル夏の終わり』公式サイト

 

「ハニーボーイ」アルマ・ハレル

母親が麻薬中毒者、父親がアルコール依存、という映画を3本立て続けに観る。とても胸を締めつけられたのは、いずれの子供も、最後まで親を見捨てなかったことだ。親は子を持つかどうかを選べるが子は親を選べない。子供のやさしさに甘えてはならない。毒親の「歪み」を全身で受け止めるのは、まずは目の前にいる子供であることを、すべての親が自らを何度も戒める必要がある。

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映画『ハニーボーイ』 公式サイト

「酔うと化け物になる父がつらい」片桐健滋

誰もがもやもやした気持ちを抱えながら生きている。それを教えてくれたのは映画だ。自分のほんとの気持ちなんてわかるわけもなく、なんとなく気がついたとき、大抵の場合、伝えるべき相手はもういない。憎しみなのか、愛情なのか、もやもやした気持ちが、愛おしくて、切なかった。

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映画『酔うと化け物になる父がつらい』公式サイト|2020年3月6日(金)全国公開