ずっと映画のことを考えている

旧「Editor's Record」(2023.2.28変更)

「パラサイト」ポン・ジュノ

とにかく面白い。のだ。ほとんど「完璧」と呼んでいいこの作品を目にし、世界の巨匠たちが白旗を掲げ、打ちのめされていることからも、この映画の凄さは窺える。娯楽性と芸術性が極めて高い次元で融合した大傑作。手に汗握る予測不能のエンターテイメントの根源に貫かれた「人間の尊厳」が強く強く胸を打つ。

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映画『パラサイト 半地下の家族』オフィシャルサイト

「わたしは光をにぎっている」中川龍太郎

さすが。センスは視点に表われる。働くこと。食べること。生きること。誰も気に留めないような日常の中に、優しさは溢れ、美しさは満ちている。そんな、つまりは暮らしが失われていく切なさを、天才・中川龍太郎監督が映像に遺した。タイトルは山村暮鳥の詩より。此の生きのくるしみ/くるしければくるしいほど/自分は光をにぎりしめる

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映画『わたしは光をにぎっている』公式サイト。

「家族を想うとき」ケン・ローチ

魂が揺さぶられる。ほどの体験は、例えば100本の映画を観たとしても、ほんの数本だ。けれど、ケン・ローチの映画には、高い確率でそれがある。善良なる人々が虐げられることへの慈しみと強い怒り。一度は引退を決意した83歳の監督が、こんなにも「攻め」の映画を撮るなんて! 不条理に立ち向かい、声を挙げ、映画を信じるチカラ。この敬愛の念はどんな言葉を尽くしても足りない。

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映画『家族を想うとき』公式サイト

「真実」是枝裕和

やっぱり、すごいなー。それは、カトリーヌ・ドヌーヴしかり、是枝監督しかり。これは、神から与えられたとしか思えないオーラを纏った女優と、映画に対する信じられないほどの実直さを持った監督が、出会うべくして出会った幸福な作品。超一流は言語や文化の違いをいとも簡単に超えていく。そして、脇を固めるジュリエット・ビノシュも、イーサン・ホークも、もちろん、素晴らしいのです。

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是枝裕和監督作品 映画『真実』公式サイト

「カツベン!」周防正行

私が小さかった頃はまだ、映画は特別な娯楽だったし、映画館は特別な場所だった。時は流れ、映画は身近になったけれど、神聖さが失われたことは否めない。活動弁士という、映画を「娯楽の王様」たらしめた先人たちと、活動写真(無声映画)への敬慕をいっぱいに詰め込んだ野心作。周防正行監督は、今や死語となりつつある、シネフィル(映画狂)であり続けている。

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周防正行監督最新作 映画『カツベン!』公式サイト