本を選ぶときに念頭に置いていることの一つに、それが、ネットはもちろん、テレビや新聞で得られない情報であるか、触れられない表現であるか、という自分なりの基準のようなものがある。森さんのドキュメンタリー作品も、著作も、いずれも賛否両論あるけれど、「正義や善意や大義を燃料にするとき、そして愛する人を守ろうと思ったとき、人は内実が変わらないままにとても残虐になれる」という言葉には、世界に蔓延り、日本を蝕む、戦争や紛争や犯罪の根本的な原因が明快に表われている。正義と善意。それこそが暴力であるということを決して忘れてはならない。