ずっと映画のことを考えている

旧「Editor's Record」(2023.2.28変更)

「シズコさん」佐野洋子

佐野さんは「私は金で母を捨てた」と書く。「愛してなかったのだ」とも。それは母に対する謝罪であり、また、自分に対する弁解でもあり、なんだか、とても胸が締めつけられた。嘘のない言葉は、強く、激しく、そして、あまりにも無垢だ。書くことで、果たして彼女は母を赦し、何よりも、自らを赦すことができたのだろうか。憎悪は愛情の裏返しでもある。これは本当に素晴らしいエッセイだと思う。

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佐野洋子 『シズコさん』 | 新潮社