ずっと映画のことを考えている

旧「Editor's Record」(2023.2.28変更)

「アンダーグラウンド」村上春樹

地下鉄サリン事件から21年。今さらながら手に取って約800ページにもわたる被害者の方々のインタビュー集を読了。思うところはいろいろあるけど、村上春樹によって編まれたこの本を読み、強く印象に残ったのは、そこに非難も、糾弾もなく、あるのは、その日に起ったことをできるだけ克明に記録しようとする「誠実さ」だったということだ。正確かつ公平に伝え、そして、結論は委ねる。結論を委ねられた受け手は、その事柄について、深く深く考えざるを得ない。新聞にしろ、TVにしろ、ネットにしろ、この国のジャーナリズムが失っているのはこの「誠実さ」ではないか。


『アンダ-グラウンド』(村上春樹):講談社文庫|講談社BOOK倶楽部