ずっと映画のことを考えている

旧「Editor's Record」(2023.2.28変更)

「あなたへ」降旗康男

期待に応え続けることの凄さを人は意外と気付かない。人の話にじっと耳を傾け、余計なことを何も語らず、いつも謙虚で、感謝することを忘れない。最新作を観なきゃ観なきゃと思っているうちに健さんは逝ってしまった。ともに遺作となった大滝秀治と二人、画面に収まり、ポツリポツリ言葉を交わす。いい役者は画面の去り際まで所作の一つひとつがほんとうに美しい。俳優は皆、あの次元に達するために研鑽するんじゃないだろうか。圧倒的な存在感とはああいうことだ。