ずっと映画のことを考えている

旧「Editor's Record」(2023.2.28変更)

雑誌

「GQ JAPAN」2022年1月&2月合併号

淀川美代子さんの訃報に一抹の寂しさを感じていたところに、GQ JAPANの編集長である鈴木正文さんの退任を知った。いつも足を運ぶヘアサロンでは、いつの間にか雑誌はiPadで提供されるようになってしまったけれど、GQとCasa BRUTUSだけは紙の雑誌が鏡の前に置…

「SWITCH」No.315「樹木希林といっしょ。」

最新作「海よりもまだ深く」の樹木希林を指して「身体とその動き、声、喋りかた。演じている、のではなく、そこにある、という演技があるものなのだなあと、ため息がでる」と書いたのは小説家の川上弘美。かつて、笠智衆がそうであったように、いつの頃から…

「MEKURU」VOL.7「みんなのキョンキョン、誰も知らない小泉今日子」

あ〜良かった! 完売続出だったバカ売れ中の雑誌を重版にてようやくゲット。圧巻は、母・由美さんとバーニングプロダクションの周防社長のインタビュー。活字といえど、ともにメディアにその生声が掲載されるなんて、まさしく奇跡! 「誰も知らない小泉今日子…

「Pen」No.599「みんなのスヌーピー」

谷川俊太郎の翻訳ということもあってか、コミック「ピーナッツ」には、ほんとうにハッとさせられる言葉がたくさん出てくる。世界で最も有名なビーグル犬の心のつぶやきは、かの猫である吾輩のように鋭く哲学的だ。スヌーピーの「配られたカードで勝負するっ…

「SWITCH」No.309「山田洋次 映画という夢に出会うために」

ここ数年の山田洋次監督の作品はまるでどれもが遺作のようだ。「伝えておかねばならない」という使命感からか、なにか鬼気迫るものがあり、一作一作、とても丹念に撮られている。新作「母と暮せば」は、彼が幾度となく描いてきた、戦争と母子がテーマ。気が…

「BRUTUS」No.814「今日も映画好き。」

アルフォンソ・キュアロンのロングテイク、グザヴィエ・ドランのスローモーション、サラ・ポーリーのドキュメンタリー、テレンス・マリックのモンタージュ、ウェス・アンダーソンの構図・・・。「複製技術時代の芸術」である映画は、時代とともにその技術や文法が脈…

「Switch」No.239「特集:闘う、大島渚」

ふと視界に入ったバックナンバーの棚を目で追いながら手にした、恐らく、生前最後の大島渚特集。「分からないことを説明するのが映画ではない。分からないまま、そのものをズバッと見せるのが映画なのだ」という言葉には、彼の思想・美学が表われており、一つ…

「Free & Easy」No.206「オレたちが愛したアメリカ」

映画「イージー・ライダー」を観たときに、強く印象に残ったのは、そのカッコ良さよりも、全編に漂っている哀しみだった。アメリカのアイコンともいえる、マーロン・ブランド、ジェームズ・ディーン、エルヴィス・プレスリー、スティーブ・マックィーン。彼らが背…

「Pen」No.392「切なくて、アラーキー」

松岡正剛は、荒木経惟の写真哲学を「写真にしなけりゃ記憶は消える」と書いた。妻の死も、癌との闘病も、右目の失明も、人生をすべてさらけだして撮ってきた天才の、数えきれないほどの写真は、どれもセンチメンタルで、どれももの哀しい。切なくて、アラー…

「spectator」Vol.33「クリエイティブ文章術」

伝説の編集者・北山耕平さんは「声」のある文章を書くことが大切なんだと強調する。それは「ぼくたちのこころの奥深くに押しこめられていたもの」であり、「その「声」を自由にしてやらなくてはならない」とも。良いものは良い、美しいものは美しい、感動した…

「BRUTUS」No.804「特集 松本隆」

アナログ盤に針を落とし、曲にあわせて、LPジャケットの中面、もしくは、裏面にある歌詞を目で追ったあの瞬間。こんな特集を読むと、それがいかに幸福で、かけがえのない、豊かな時間だったのかがわかる。「ピンクのモーツァルト」も、「ルビーの指輪」も、…

「SWITCH」No.303「是枝裕和の20年 “海街”へ―ある家族の物語」

奥能登も舞台となったデビュー作「幻の光」を観たのは渋谷だったか、有楽町だったか。あの頃は本当によく独りで映画館へ行った。それから20年。是枝監督のほとんどの作品を観ているけれど、キャリアを重ねるごとに、その繊細な感性はどんどん研ぎ澄まされ、…

「SWITCH」No.302「ジャズタモリ TAMORI MY FAVORITE THINGS」

タモリさんのやさしさに気がついたのはいつだったろうか。だからこそ「ジャズは演奏者の自己主張が12音節に集約する音楽だ。俺の話を聞いてくれ。ジャズを楽しむにはその話を聞いてあげる優しさを持たないといけない」というタモリさん自身の言葉がほんとう…

「BRUTUS」No.799「尊敬できる「骨董品」。」

価値を数値化しない、というか、数値化できない、曖昧で、ちょっと胡散臭く、それでいて実はピュアな骨董の世界が好きだ。お店で「これいくら?」と聞いたら、店主が人差し指を立てて「僕はそれが1万か10万か100万か、まったくわからなかった」と仲畑貴志さ…

MUSIC MAGAZINE 増刊「どんとの魂」

「正直だし、優しいし、あんまり面白くないとこがめっちゃ笑えるし、カッコ悪いとこもめっちゃカッコいい」どんとの魅力がみっちり詰まった一冊。どんとを知ったのは、サブカルにどっぷり浸かった、軽音楽部の2コ上の先輩のお陰だけど、フォークからパンク/…

「Fライフ」04「総力特集! 映画ドラえもん35周年」

藤子・F・不二雄公式ファンブック「Fライフ」最終号にして、ついに高岡特集! 高岡工芸高校、越中中川駅、古城公園、射水神社、高岡大仏、文苑堂書店。この街で暮らしたノスタルジックな感覚を、わずかでもF先生と共有できるというのは、とても幸せなことだ。…

「Quick Japan」vol.117「吉高由里子 二人三脚の足跡」

彼女の作品を観たことのある映画ファンなら、一度は「とんでもない女優がいるぞ」と思うはずだ。例えば、園子温という映画監督が「発掘」し、世に出した女優には、他にも、満島ひかり、二階堂ふみ等がいるけれど、存在感はもちろん、感受性の鋭さ、賢さ、自…

「ユリイカ」No.656「俳優・高倉健」

高倉健について語るとき、誰もがとても饒舌になる。なぜなら、誰もが健さんに自らを重ね合わせ、その時代その時代を投影し、そして、自分だけの健さんに思いを馳せるからだ。去年の追悼上映。エンドマークが出たあと、期せずして客席から大きな拍手がわき起…

「SWITCH」No.299「荒木経惟のたのしい写真術」

「センチメンタルな旅・冬の旅」をいつ買ったかのか忘れたけれど、パラパラとページをめくり、すぐレジに向かったことはよく憶えている。その大本。自費でわずか1000部しか刷られなかった、幻の処女作の未公開コンタクトプリント18枚を全カット見られるだなん…

別冊太陽「アイヌの世界を旅する」

アイヌといって思い浮かぶのは、背面や袖口、裾周りに、どこかハワイアンキルトにも似た、力強く独創的な曲線による美しい文様の刺繍が施されたアットゥシ(靭皮衣)のことだ。それ以外にも、料理、建築、芸能、楽器、言語など、たくさんのモノやコトが継承…

「ケトル」Vol.22「テレビ東京が大好き!」

面白いコンテンツは狙ってできるものではない。その場のノリと勢い。いわば、勘違いをしたまま、なりふり構わず突っ走ったときに生まれる、得体の知れない強烈なパワーが人を惹きつけるのだ(と思う)。タモリも、ビートたけしも、ついでに、美輪明宏も、TV…

「考える人」No.51「家族ってなんだ?」

科学技術は人間の持っている能力を伸ばすよう伸ばすように働いてきたけれど、伸ばせないものがあり、それは「例えば愛という言葉で表現されるもの」、その基礎を教えてくれるのが家族であると、京都大学学長の山極寿一さんは説く。そして「相手に対する優し…

「BRUTUS」No.791「なにしろ映画好きなもので。」

15歳の頃、ジョン・ウーの「男たちの挽歌」で香港のアクションノワールに心酔し、その源流を辿っていたら、清順と深作に行き着き、増村保造や大島渚に夢中になった。そんなイギリス人がいるなんて! 国境や時代、性別や世代を超えて、いつでもどこでも共感で…

「Fライフ」03「藤子・F・不二雄ミュージアムへようこそ。」

1万点を超える書物やレーザーディスク類が果てしなく陳列された館内を写した一枚の断ち切り写真に心を奪われる。この限りない好奇心と、日々勉強を怠らない勤勉さ、読者に対する誠実さこそ、藤子・F・不二雄の最大の魅力。「ひたすら“良質の娯楽”をのみ提供…

「BRUTUS」No.790「特集 進撃の巨人」

マンガは読んでいないけど、なにゆえ世界を熱狂させているのか、にはとても興味がある。「壁」の中で平和を謳歌していた人間が、ある日突然「得体の知れない大きなもの」の侵害を受け、理由もわからぬまま、家族を殺され、戦いに駆り出されていく。戦うべき…

「BRUTUS」No.789「男の定義」

「無から有をうみだすインスピレーションなど、そうつごうよく簡単にわいてくるわけがない。メモの山をひっかきまわし、腕組みして歩きまわり、溜息をつき、無為に過ぎてゆく時間を気にし、焼き直しの誘惑と戦い、思いつきをいくつかメモし、そのいずれにも…

「ケトル」Vol.21「ウディ・アレンが大好き!」

ウディ・アレンの映画の主人公は、いつも不安や恐れを抱き、コンプレックスに悩んでいる。それでも魅せられてしまうのは、そんなもやもやとした気持ちを、彼らはどこか、愛しんでいるように感じるからだ。世間を揶揄するシニカルな視点や人間をどん底に陥れる…

「SIGHTART」VOL.1「北斎は風と花で世界とは何かを描いた」

うまく絵を描くことではなく、世界の真実を描くこと、それを一生涯の仕事とした北斎。「富嶽三十六景」を描き始めたのが70代だったということ、その事実をひとつ知るだけでも、最期まで進化し続けた彼の生き様を窺い知ることができる。そして、「アートをロ…

美術手帖増刊「国宝のすべて」

「このおちょぼ口がたまらん!」とか「正直言ってほかの絵はたいしたことがない(笑)」とか「抜群のマンガ的センス」とか「パンパンの太もも、怖すぎる!」とか。国宝だろうがなんだろうが、見たまま、感じたまま、心の底から楽しむ、美術史家・山下裕二先生…

「Cut」No.347「ハリウッドが作れなかった名作映画ベスト100!!」

映画を学んでいちばん良かったのは「映画は世界のいたる場所で作られている」ということを知ったことだ。例えば、同じように愛を描くにしても、ヨーロッパにはヨーロッパの、アジアにはアジアの、中東には中東の、南米には南米の、愛の表わし方があり、その…