Editor's Record

観たモノ、読んだモノ、聴いたモノ。好きなモノの記録。

映画

「DOPE/ドープ!!」リック・ファミュイワ

うわぁ、これはいいぞ! 1970年代のブラックスプロイテーションを、今に甦らせたら、きっとこんな感じ⁉︎ いや、これは現代の「ドゥ・ザ・ライト・シング」だ。90年代のHIPHOPをこよなく愛し、L.A.のスラム街でBMXを乗りこなす、3人のギークたちが最高にダサくて…

「シング・ストリート 未来へのうた」ジョン・カーニー

他人にどう思われようが「自分にはこれがある」と思えるものに出会えることは何よりも幸せなことだ。これは、まわりが見えなくなるほど、何かに夢中になったことがある人なら、胸がキュンキュン締めつけられる映画だ。それにしても、80年代って、あんなにカ…

「家族の灯り」マノエル・ド・オリヴェイラ

観始めてからしばらくの間、なんのこっちゃわからず、つまらないなぁと思う映画ほど、いつまでも頭から離れない作品は多い。105歳のオリヴェイラ監督が描く、ほとんど画面が変わらない会話劇は、家族とはなにか、貧しさとはなにか、欺瞞とはなにか、人生とは…

「団地」阪本順治

伝説の喜劇役者・藤山寛美の DNA を色濃く受け継ぐ天才・藤山直美が主演する映画が撮られたというだけで、それはもう事件だ。岸辺一徳、大楠道代、石橋蓮司との黄金のカルテットによって生みだされる可笑しみと哀しみは、日本映画界屈指の、というよりも、最高…

「好きにならずにいられない」ダーグル・カウリ

ほんとうの愛は見返りを求めない。どこに行っても場に馴染めず、どこか浮いている、おデブでオタクな43歳の独身おじさんに、まさかそんなことを教えられるなんて。まったくもって冴えなかった大男がどんどんカッコよく見えてくるのは彼が「恋」をするからだ…

「ジョーのあした 辰??一郎との20年」阪本順治

ボクサーが憧れるボクサー。辰??一郎はやっぱり特別だった。1人の天才ボクサーを20年にわたって撮り続けた奇跡のドキュメンタリーは、そのまま人間・辰??一郎の魂の記録でもある。辰?は、弱く、それ以上に、強い。変わったようで揺るぎがなく、変わってないよ…

「ひそひそ星」園子温

科学技術の進歩が人間の感性を蝕むこともある。「遠い国への憧れや、銀河系の彼方へのロマンが失われ、どこでも隣り部屋に行くように簡単になることで、すべてが立体的でなく、平坦になった」という台詞は、劇中で描かれる未来のみならず、現実の世界でもす…

「ヤング・アダルト・ニューヨーク」ノア・バームバック

隠れた名作「イカとクジラ」のノア・バームバック監督の「らしさ」満載、オフビートでちょっぴりほろ苦い、ハイセンス・コメディ。20代のカップルと対比される40代のカップルの「昭和的」ズレ感が、滑稽でもあり、哀しくもあり、そして、愛おしかった。にして…

ベストテン2016

2016年もあと2日。今年観た映画(DVD)は昨年より少なく108本でした。今年はいろんなことが起きましたが、例年にもまして、映画に救われたように思います。 さて。年末恒例、特に印象に残った映画は、 「きみはいい子」呉美保「あん」河瀨直美「海よりもまだ…

「裸足の季節」デニズ・ガムゼ・エルギュヴェン

5人姉妹それぞれの個性。互いの存在に寄り添い、ときに、ぶつかり合う関係が、刹那的で美しく、そして、もどかしい。描いたのはトルコ出身の女性監督。物語後半、ほんとうの自由を得るため、末娘が意を決して臨む闘いは、今なお、世界で虐げられ、蔑ろにされ…

「ディストラクション・ベイビーズ」真利子哲也

結局のところ、暴力とは快楽である、ということを前提とする映画しか信用することはできない。菅田将暉も、向井秀徳の音楽も、実に際だっているけれど、なんといっても、これは柳楽優弥の圧倒的な代表作になるに違いない傑作だ。人を殴るたびに響く、ごつん…

「ブルックリン」ジョン・クローリー

故郷アイルランドを離れ、独りアメリカに渡った女性の葛藤と成長が描かれる。現在、アイルランド系と自認するアメリカ人は約3,600万人とか。それらの祖先それぞれに、同じような「移民」の物語があると思うと感慨深い。劇中、もはや帰る場所のない移民労働者…

「ふきげんな過去」前田司郎

とても不思議な映画だった。観終えた後も、一体なんだったんだろう、と何度も何度も反芻している。決して許されないけれど、爆弾を作って、爆発させちゃいたい気持ち、なんとなくわかる。死ぬほどつまらない憂鬱な日常や、えたいの知れない不吉な塊から逃れ…

「教授のおかしな妄想殺人」ウディ・アレン

「人生は無意味である」という真理に到達した大学教授が、生きる意味を求めて計画した完全殺人犯罪。これぞまさしく、筋金入りのペシミストとして、どこか哲学的なコメディを量産してきた、ザ・映画職人ウディ・アレン監督の真骨頂。齢80歳を超えてなお、小粋…

「或る終焉」ミシェル・フランコ

「いのちとは何か」という問いに対する答えが決して一つではないように、この映画もまた、さまざまに解釈し、さまざまに思いを巡らせることができる。知られざる終末医療の現場。患者に寄り添えば寄り添うほど、悲しみや喪失感が増すというパラドクス。ティ…

「セトウツミ」大森立嗣

ひまをもてあますから、くだらないことを考えて、ときに思い悩み、ときに誰かを慮ることだってできる。嗚呼、たしかに青春は、どうしようもなく無意味だったけれど、その無意味な時間がサイコーだったなぁ~と、胸をぎゅっと締めつけられるような映画。あの…

「クーパー家の晩餐会」ジェシー・ネルソン

それぞれの事情を抱えながらも、それでも、家族みんなが一堂に集うクリスマス。そんな特別な日に起こる、小さな、小さな奇跡を、いっぱいに詰め込んだ、これぞまさしく本物のハートフル・コメディ。アメリカの人たちにとって、クリスマスという日が、いかに大…

「アイ アム ア ヒーロー」佐藤信介

まさに日本映画界の才能を結集して臨んだ本格的「ゾンビ映画」へのチャレンジ。キャストに旬の俳優陣を揃えながら、完全なるR15、恐らくTVでは大幅にカットしなければ放映できないであろう潔さ。しっかし、こんなスプラッター映画が、TSUTAYAの棚の一番目立…

「孤独のススメ」ディーデリク・エビンゲ

しがらみも、こだわりも、常識も、プライドも、持たなくてもいいものを持ってしまうから、生きることがどんどん窮屈になっていく。自由になるためには、他人の目を気にしない以上に、まずは自らを解放する必要がある。オジサンふたりが織りなす、とてもヘン…

「二重生活」岸善幸

何をやっても満たされない、心の中にぽっかりと空いた空洞を埋めてくれるのは、ただの自分ではなく、他者を媒介とした自分だった。覗いてはならなかった他者の秘密の扉をひらくことで露わになる自らの心の渇きと餓え。この世という迷宮に迷い込んでしまった…

「神様メール」ジャコ・ヴァン・ドルマル

例えばこんなシーンがある。幼いころに片腕を失った女性が座っているテーブルの上で、失われた「手」が、ヘンデルのアリアにあわせ、軽やかにダンスを踊る。やがて、ダンスが終わると、彼女は義手でそっとその「手」に触れ、握手を交わす。こんなシーンがあ…

「さざなみ」アンドリュー・へイ

「長距離ランナーの孤独」のトム・コートネイと「愛の嵐」のシャーロット・ランプリング。その二人が共演するだけで、この映画は、間違いなく歴史にその名が刻まれる。夫婦として45年間積み重ねてきたものが一瞬にして崩れ去りそうな予兆。まさしく「さざなみ…

「ニューヨーク 眺めのいい部屋売ります」リチャード・ロンクレイン

住まいのほんとうの価値は、その空間の中で、どれだけの幸せや思い出が積み重ねられてきたかで決まる。それはきっと、立地や相場といった物差しでは到底計り知れないものだ。モーガン・フリーマンとダイアン・キートン。ごく普通の夫婦の日常がこんなにも滋味…

「太陽」入江悠

SF(フィクション)でなくても、こんな風な差別はきっとどこにでもある。支配される側であった人が、支配する側にまわった途端、想像力がいとも簡単に欠如してしまうのはなぜだろう。進化すればするほど退化するものもある、という人間の悲しい性をまざまざ…

「君がくれたグッドライフ」クリスティアン・チューベルト

決してその通りにはいかないにせよ、どのように生きていくのかを選択するのと同じように、どのように死にたいのかを考えておくことは、とても大切なことなんだと思うようになった。そして、人生の豊かさを決めるのは、その長さではなく、どのように人を愛し…

「カミーユ、恋はふたたび」フローランス・セイヴォス

「神よ。変えることのできるものについて、それを変えるだけの勇気をわれらに与えたまえ。変えることのできないものについては、それを受けいれるだけの冷静さを与えたまえ」というニーバーという神学者の祈りを、この映画によって初めて知った。そして、さ…

「星ガ丘ワンダーランド」柳沢翔

記憶というのはとても主観的なものだ。光の当たり方が変わると、まったく異なったものに見えるように、誰かによって語られる過去は、思いがけず新たな真実をもたらしてくれる。それぞれの過去が一本につながったとき、美しい思い出が浮き立ってくる、どこか…

「ぼくのおじさん」山下敦弘

ぼくにもおじさんがいた。酔っぱらうといい気分になって、いつも楽しそうに笑っていたなぁ、とか、子供みたいに無邪気で、時折、ほんとうの子供たちをハラハラさせていたなぁ、とか、ぜんぜん大人っぽくないところが大好きだったなぁ、とか、今はもういなく…

「ルーム」レニー・アブラハムソン

子供にとって母親がすべてであるように、母親にとって子供がすべてでもある。これは、しあわせなその小さな世界から一歩足を踏みだす勇気を描いた人生の真実に触れるファンタジー。困難に満ちたこの世界は、それでも美しく、輝いている。そして、愛だけが、…

「ヘイル、シーザー」ジョエル&イーサン・コーエン

映画という虚像に魅せられたなら、そこからもう抜けだすことはできない。自らもその甘い蜜に誘われてしまったコーエン兄弟が、衰退以前のハリウッドの黄金期を舞台に、映画への愛をいっぱいに詰め込んだ、ニヤリさせられっぱなしのコメディ映画。これはトリ…

「人生は小説よりも奇なり」アイラ・サックス

ほんとうの苦しみを知っているひとは、ほんとうに苦しんでいるひとにそっと寄り添うことができる。愛は寛容であり、愛は親切である。そして、人をねたまない。39年寄り添ったゲイのカップルが教えてくれるのは、愛がそこにあるだけで、人生はとてつもなく美…

「おとぎ話みたい」山戸結希

新しい才能の登場はいつもセンセーショナルだ。未知なるものと遭遇したときに生じる違和感は、やがて、驚きに変わり、それが本物だとわかった瞬間、堰を切ったように胸に迫ってくる。初恋によって覚醒した自意識に苛まれる少女の傲慢な美しさ。若き天才と呼…

「殿、利息でござる!」中村義洋

滅私奉公。私利私欲を除き去り、身を捧げて公に尽くす。行き過ぎた、あるいは、上辺だけの個人主義によって失われつつある、日本人の清らかな心根を、やむにやまれぬ、切実な思いを込めて描いた映画。中村義洋監督の熱さが好き。慎み深さこそが最高の美徳な…

「母よ、」ナンニ・モレッティ

親を看取ってようやく一人前になれる。人生において最も重要な通過儀礼である母の死。その過程における動揺、苛立ち、絶望、諦め、そして受容。そうした心の複雑なゆらめきを、丹念に、そして、誠実に描き切ったイタリア映画。主人公の一挙手一投足がしみじ…

「追憶の森」ガス・ヴァン・サント

生命のエネルギーに満ち満ちた手つかずの自然が生い茂る樹海。そこに世界中から自殺志願者が訪れるというパラドックス。生と死が奇妙に調和する場所で、ガス・ヴァン・サントが、その死生観をスピリチュアルに描いた。悲しみと向き合い、悲しみを乗り越える。1…

「モヒカン故郷に帰る」沖田修一

表面に覆われているものを、磨いて、磨いて、やさしさや、思いやりや、愛情の、「芯」のようなものにじんわりと触れる。沖田監督が撮る映画を例えるなら、こんな感じだ。それにしても、吹奏楽部が奏でる「I LOVE YOU,OK」はサイコー。この曲を聞くと、生き…

「ヴィクトリア」ストゥルラ・ブラント・グロヴレン

140分ワンカット。人生が一変する驚愕の一夜。即興の台詞を喋りながら、歩き、走り、踊り、登る俳優たちを、ひたすらカメラが追い続ける奇跡。そこには、生まれたばかりの映画が持っていた、感覚を共有するという興奮があった。誰もが不可能だと考えているこ…

「シーヴァス 王子さまになりたかった少年と負け犬だった闘犬の物語」カアン・ミュジデジ

闘犬として生まれた以上、餌を食いたけりゃ闘わねばならず、それが嫌なら死んでいくほかない。何もわかっていないようで、実はすべてを察しているような犬・シーヴァスの眼光をみていると、なんだ、人間社会もおなじじゃねぇか、と思えてくる。この世の不条理…

「スポットライト 世紀のスクープ」トム・マッカーシー

まずは声を上げること。そして、その声に気づくこと。さらに、その声を広く知らしめること。ジャーナリズムが正しく機能する、たったそれだけのことが難しいのはなぜか。黙殺や隠蔽がまかり通るこの世の中で、ジャーナリズムの存在意義を改めて思い起こさせ…

「キャロル」トッド・ヘインズ

「自分を偽る生き方では私の存在意義がない」というキャロルの台詞は、セクシャルマイノリティのみならず、違和感を抱えながら生きている、すべての人たちの心の叫びだ。この映画が素晴らしいのは、女性同士の崇高かつ耽美なラブストーリーであるだけでなく…

「恋人たち」橋口亮輔

「二十才の微熱」から24年。それからわずか4本しか撮っていないけれど、橋口亮輔こそ、日本映画界の最高の映画監督であることに間違いはない。やさしければやさしいほど、繊細であれば繊細であるほど、誠実であれば誠実であるほど、痛みを伴うこの日本の中で…

「ヘイトフル・エイト」クエンティン・タランティーノ

殺られる、殺られる、殺られるぞぉぉぉおお、と、ゾクゾクしっぱなしの167分。一癖も二癖もある男7人と、謎に包まれた女1人の、密室でのウソつき同士の「殺し合い」を、人種差別と略奪が繰り返されたアメリカの歴史に置き換え、超一級のエンターテインメント…

「リップヴァンウィンクルの花嫁」岩井俊二

誰もがどこかで自分の役割を選び、仮面をつけながら生きている。圧倒的な孤独が蔓延しているこの世界の中で、それでも確かに存在する魂と魂の「ほんとう」の触れ合いを、こんなにも美しく哀しく描いた映画を知らない。そして、岩井俊二監督は、社会の膿をあ…

「レヴェナント:蘇えりし者」アレハンドロ・G・イニャリトゥ

アカデミー賞にて、2年連続で監督賞を受賞したアレハンドロ・G・イニャリトゥ、3年連続で撮影賞を受賞したエマニュエル・ルベツキ、そして、レオナルド・ディカプリオ。ハリウッドの超一流が結集し、その才能をいかんなく発揮した作品の、その凄まじさをまざまざ…

「俳優 亀岡拓次」横浜聡子

役柄によって、同じひとが演じているようには見えなくて、それでも、そのひとらしさがどことなく漂っている。俳優という、とても不思議な職業について、これまた絵に描いたような俳優・安田顕が、その悲喜こもごもを演じる、まるでノンフィクションのようなフ…

「最愛の子」ピーター・チャン

隣国の中国で、公称(ということはかなり控えめ)で年間約20万人もの子どもが誘拐され、日本円にして50万〜130万で人身売買されているという事実を、ほとんどの日本人は知らない。映画はときに社会の闇をあぶりだし、のほほんと暮らす私たちに突然、痛切な問…

「お盆の弟」大崎章

いつまでたっても大人にならない(なれない)。グダグダ、ウダウダ。情けなくて、弱くて、イタいけれど、最後の最後、ぎりぎりのところで誠実で、とてつもなく、やさしい。そんな、愛すべきお馬鹿さんたちによって、今日もどこかで映画は作られている。映画…

「ぼくとアールと彼女のさよなら」アルフォンソ・ゴメス=レホン

世界で最も胸を打つ映画があるとすれば、それはきっと、たった一人の誰かのために作られたフィルムだ。愛じゃなくて、恋でもないとすれば、それは一体なんなんだろう。「決して負けない強い力」がこの映画には確かにあった。全編にわたって、やさしさと、誠…

「COP CAR/コップ・カー」ジョン・ワッツ

わずかなモチーフでも映画は傑作になるということの証明。このたった一台のパトカーをめぐるクライム・サスペンスが、こんなにも予測不可能で、手に汗を握る展開になるなんて! 緊迫感みなぎる銃撃戦も素晴らしかったけれど、少年がアクセルを全開に踏み込む…

「幸せをつかむ歌」ジョナサン・デミ

史上最多となるアカデミー賞18回のノミネート。DVD にその名前がクレジットされているだけで手に取ってしまう凄さがメリル・ストリープにはある。世界一有名な鬼編集長や歴史に名を刻む英国首相、本作では、場末のライブハウスで歌うしがないロックシンガーま…