Editor's Record

観たモノ、読んだモノ、聴いたモノ。好きなモノの記録。

映画

「パーティで女の子に話しかけるには」ジョン・キャメロン・ミッチェル

なぜあんなにもパンクロックに魅せられたのか。それはきっと、なぜかそこに「美しさ」を感じてしまったからなんだろうと思う。遠い惑星からやってきたカルトに属する彼女と、パンクに夢中な少年との恋。あまりに奇想天外で、まったくクソみたいに最低な作品…

「シェイプ・オブ・ウォーター」ギレルモ・デル・トロ

初めてサリー・ホーキンスという女優を知ったのはマイク・リー監督の「ハッピー・ゴー・ラッキー」だった。その頃から抜群の存在感を放っていたけれど、まさか9年後、ヴェネツィア国際映画祭とアカデミー賞をともに制する映画で主役を務めるなんて! 突出した才…

「南瓜とマヨネーズ」冨永昌敬

だらしなく、自分勝手で、いとも簡単に流されてしまう。そんなイタくクズな彼らをなぜかとても愛おしく感じてしまう。不器用で、どうしようもなく痛々しい恋愛のリアルが、いつまでも余韻として残る稀有な映画だった。それにしても、臼田あさ美が相変わらず…

「グレイテスト・ショーマン」マイケル・グレイシー

シンプルで、力強い、歌と踊りの圧倒的な力。人を喜ばせる、人を楽しませる、その語源にある「エンターテイメント」の真髄が、伝説の興行師P.T.バーナムの人生をベースに、ぶっちぎりのクオリティーで描かれる。どの曲も素晴らしかったけれど、圧巻はキアラ・…

「笑う故郷」マリアノ・コーン&ガストン・ドゥプラット

絶対的なものなど何ひとつない。高尚と低俗、賢明と愚劣、尊敬と軽蔑は、いずれも紙一重。このアルゼンチンとスペインとの合作で生まれた映画は、決して一面で捉えることのできない人間の多面性、複雑な感情のひだを炙りだし、人生は喜劇であり、と同時に、…

「獣道」内田英治

いい映画だった。行き場のない少年と少女のセンチメンタルな恋愛映画としても、カルト、宗教、ヤンキー、AVといった、誰にも知られることのない(ほんとうのところを誰も知ろうとはしない)世界の中で、もがきながら生きる若者たちの青春映画としても。 孤独…

「立ち去った女」ラヴ・ディアス

3時間48分という上映時間が、長いのか、短いのか、それはわからない。ただ、その中に、想像力を限りなく駆り立てる、人生の悲しみや苦しみが、すべて表現されていた。平均で5~6時間、ときに10時間を超える映画を撮るというフィリピンの奇才ラヴ・ディアス監…

「光と禿」青木克齊

ややスベり気味のタイトルに惹かれて観てみると、パンツ一丁のハゲのおじさんが、打ち込みされた音源にあわせてポエムを叫んでいた。下ネタのナポレオン、本人役で出演のクリトリック・リスのスギムさん。ヒロインの「変な曲だけど、何かいい」の台詞の通り、…

「ギミー・デンジャー」ジム・ジャームッシュ

殿堂入りのセレモニーにて「音楽は人生であり、人生は商売ではない」とパンクのゴッドファーザーは語った。ジャームッシュが引きだした一つひとつの言葉には、一切のブレがなく、ロックとは生き様であるということを改めて思い知らされる。「最低」こそが「…

「アウトレイジ 最終章」北野武

仁をもって義をなす、義によって仁を尽くす。結局のところ、「アウトレイジ」シリーズは、いずれも、義理や人情がまったく意味をなさない現代に抗いながら、頑なに「仁義」をつらぬき通そうとする男の物語だった。主人公・大友の「おとしまえ」には、孟子から…

「ブルーム・オブ・イエスタデイ」クリス・クラウス

ナチスの戦犯を祖父にもつ男とその祖父に祖母を殺された女。心に傷を背負ったまま、悲惨な過去を乗り越えようとする、かつてない愛の物語は、どこかほろ苦く、そして、切ない。私たちが決して忘れてならないことは、今、自ら為していることが、未来の子供た…

「万引き家族」是枝裕和

必死だった。超一流の俳優たちの、一つひとつの台詞、一つひとつの表情、一つひとつの仕草に、心がぐちゃぐちゃにかき乱され、物語についていくことに、ただただ必死だった。その根底にある「怒り」。それでいて、喜びも、哀しみも、楽しさも、喜怒哀楽のす…

「光」大森立嗣

まほろ駅前シリーズの原作者・三浦しをんの振り幅! じくじくと化膿したような過去の罪を共有してしまった幼なじみ3人の、どろどろと愛憎が渦巻いている感情と、ひりひりとした人間関係。暴力への欲望と連鎖。ヒトはもともとケダモノとして存在しているのか、…

「彼女がその名を知らない鳥たち」白石和彌

胸が張り裂けそうだ。「無償の愛」というものが、もしも本当にあるのだとしたら、きっとこんな風に、哀しくて、哀しくて、やりきれないものなんだろうと思う。ほとんどの人生はハッピーで終わらない。それでもなお、生きるに値するものがあるとするならば、…

「ザ・サークル」ジェームズ・ポンソルト

企業は宗教に似ている。利益を追い求める熱狂の渦の中にいると、視野はどんどんと狭まり、終いには、渦中の人間を盲目にしてしまう危険をはらんでいる。忘れてならないのは、一歩ひいたところから、冷静かつプレーンに自らを顧みるという視点だ。どうなるべ…

「ユリゴコロ」熊澤尚人

狂気と愛は共存することができるのかということを野心的に描いた映画。吉高由里子、松山ケンイチ、松坂桃李ら、キャストが織りなすフィクションが、人間のリアルを浮き彫りにする。天才・吉高由里子はやっぱりいいのだ。 映画『ユリゴコロ』オフィシャルサイト

「50年後のボクたちは」ファティ・アキン

傍目にはめちゃくちゃにみえても、当事者同士はちゃんとわかりあっている。思い返せば、あの頃、毎日が「冒険」だったんだなぁと思う。そうだ。「年月を過ぎても決して古びることのない、特別で大切な思い出」こそが、人生にとってかけがえのない宝物になる…

「パパのお弁当は世界一」フカツマサカズ

お弁当をつくる。わたす。食べる。空になった弁当箱をかえす。その繰り返し。そんな毎日のやりとりが、最もシンプルだけど、最も強く、最も深い愛情の、何よりの証なのだ。この映画をつくろうと思った人たち、当初15分の予定だった短編を、65分の長編にし、…

「ポンチョに夜明けの風はらませて」廣原暁

やらなきゃいけないことも、やるべきこともなんにもない、ただ何となく過ごしていた無為な日々。それまで考えたこともなかった「青春」をふと意識した瞬間に、その終わりは突然にやってくる。これはまるで線香花火の燃え尽きる前の一瞬の輝きを切りとったよ…

「オン・ザ・ミルキー・ロード」エミール・クストリッツァ

クストリッツァを初めて知ったのは、確か「黒猫・白猫」だった。そのスクリーンから溢れんばかりの「いのちの躍動」に、ただただ圧倒されたことを今でもはっきりと覚えている。あれから20年近く経ってしまったけれど、彼の映画特有の、死と隣りあわせの「いの…

「ドリーム」セオドア・メルフィ

怖いのは疑いを持たなくなるということだ。慣習、常識、当たり前。変わらないということが、いかに進化を妨げるものであるかということをこの映画は教えてくれる。人種差別に負けなかった黒人女性たちもスゴイが、偏見なく彼女たちと向き合った上司もアッパ…

「未来よ こんにちは」ミア・ハンセン=ラブ

「凛とした美しさ」とは何か。絶望的な状況に追い込まれても、立ち止まらない、振り向かない。前に進む。人知れず涙をみせることはあっても、やがて、孤独をも正面から受け入れる。経済的にも、精神的にも、他者に依存をしない「自由」を、自らの力で勝ちと…

「裁き」チャイタニヤ・タームハネー

世の中を、注意深く、細やかに見ていないと、こんなにも社会を鋭く洞察する映画はつくれない。言語も、階級も、文化も、宗教も、まったく異なる人々が、裁き、裁かれる下級裁判所の現場を描くことで浮き彫りになる、インドの複雑に入り組んだ現実。私たちは…

「プラネタリウム」レベッカ・ズロトヴスキ

ちょっとしたボタンのかけ違いで、人の一生は驚くような展開をみせる。人は見たいものを見たいようにしか見ることができない。そんな曖昧模糊とした人生の断片をニヒルスティックに、それでいて、ファッショナブルに美しく描く。父ジョニー・デップと母ヴァネ…

「しあわせな人生の選択」セスク・ゲイ

友というのは特別だ。家族や恋人ほど近しくはないけど、かといって、離れていても、いつも寄り添ってくれてるような。言葉を尽くさずともわかりあえて、どんな選択をも、受け入れ、応援してくれる。末期癌で死にゆく男とその友人による4日間の記録。ただ側に…

「三度目の殺人」是枝裕和

大切なのは、真実か、人間か。最強のキャストとスタッフ。この日本映画史上、屈指の心理サスペンスには、司法を超える人間の哀しみと深みが、圧倒的なクオリティーによって表わされている。それにしても、その緻密さといったら! 是枝監督の作品にはいつも、…

「ブランカとギター弾き」長谷井宏紀

自分が生きていく場所も、自分が生きていく術も、自分自身で選ぶという自由。そのかけがえのない尊さをマニラのスラムに生きるストリートチルドレンが教えてくれる。お金も、家も、家族も、そのすべてがなくても、自らで決断する、という自由さえあれば、こ…

「映画ドラえもん のび太の宝島」今井一暁

映画バカの父親とは違い、今まで頑なに暗闇を嫌がっていた息子が、突然「映画に行きたい」といったので劇場へ。大きなスクリーンで観る「映画ドラえもん」はやっぱり最高。ジャイアンの男気に、スネ夫の実はいい奴っぷりに、しずかちゃんの強さに、のび太の…

「さよなら、ぼくのモンスター」ステファン・ダン

抑えようとも抑えきれない気持ちと、その衝動を、オリジナリティ溢れるスタイリッシュな映像で表わしたカナダ映画。自らのセクシュアリティを自覚することで芽生える葛藤と、その受容が、痛々しいほど繊細に描かれる。「クソまみれの人生なら強くなるしかな…

「散歩する侵略者」黒沢清

SFとしても、アクションとしても、そして、ラブストーリーとしても超一級。「地球侵略」というハリウッド的な物語を、こんなにも不思議に、こんなにも独特に描くなんて、これは黒沢清監督にしかなせない業だ。ハラハラして、ドキドキして、ゾクゾクして、ニ…