ずっと映画のことを考えている

旧「Editor's Record」(2023.2.28変更)

「新聞記者」藤井道人

恐らく政治だけの話ではない。権力を維持することが第一の目的となった世界では、やがて、忖度することが当たり前となり、罪悪感は消え失せ、倫理や道徳が正しく機能しなくなってしまう。これは、そんな世界の中で、個人が尊厳を失わずにどう生きていくのかを問いかける映画であり、いずれを選んでも、地獄とならざるを得ない状況、即ち、現代の日本を告発する物語だ。

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https://shimbunkisha.jp/

「ルパン三世 THE FIRST」山崎貴

息子と二人で映画館へ。これはアガッったーーー!すでに出来上がってしまっている世界観を崩すことなく、さらに観客の期待を超えていく。それは恐ろしく困難な仕事に違いないけれど、そのプレッシャーを喜びに変え、対象への愛情と、歴史を積み重ねてきたクリエイターたちへの敬慕を大・大・大爆発させた素晴らしい傑作。これぞ、オマージュの天才、山崎貴監督の真骨頂。ルパン、次元、五右衛門はもちろん、不二子も、銭形も、いつもにも増してカッコ良かった。不朽の名作「カリオストロの城」に匹敵するドラマチックなストーリー展開。3Dにもバッチリハマって、個人的にはドラえもんより好き。

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映画『ルパン三世 THE FIRST』公式サイト

「スタンド・バイ・ミー」ロブ・ライナー

中1の夏。砂浜のキャンプ場で、その辺に落ちている木の枝で焚き火をし、友だち4、5人と朝方までだべりながら、気がついたら寝落ちしていた。で、次の日、ぼーっと寝不足のまま、「どさん子」という店で札幌ラーメンを食べて帰った。一緒に行った友だちとは、その後、疎遠となり、あれはもしや夢だったのかと、今ではもはや記憶もおぼろげだけど、自分にとってはかけがえのない思い出だ。40半ばを過ぎてからの「スタンド・バイ・ミー」はやはりヤバかった。いろんな思い出が走馬灯のごとく甦り、劇中の台詞にあるように、すべてがそこにはあった。

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https://www.sonypictures.jp/he/2234

「A GHOST STORY/ア・ゴースト・ストーリー」デヴィット・ロウリー

な、なんだ、これ。自分がいなくなった世界で妻を傍観することしかできない、その名の通り、時空を超えて幽霊が彷徨する物語。とかくわかりやすさが求められる現代において、ここまで観念的な映画を撮るというだけで称賛に値する。しかも、ケイシー・アフレックにルーニー・マーラという、今、最も旬な俳優をキャスティングして。常識の枠の中で映画を撮っていたら、見えざるものを掴みとることなど到底できないのだ。

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映画『A GHOST STORY / ア・ゴースト・ストーリー』公式サイト

「男はつらいよ 望郷篇」山田洋次

シリーズ第5作。山田洋次は「男はつらいよ」について「男の辛さを、男が男らしく、人間が人間らしく生きることがこの世にあっては如何に悲劇的な結末をたどらざるを得ないかということを、笑いながら物語ろうとするものである」と書いている(松竹HPより)。どこにも居場所のない孤独。わかっちゃいるけどやめられない。シリーズを完結させるつもりで山田監督が書き、久しぶりにメガホンを握った本作には、寅さんが背負う人間の哀しみが炸裂している。

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第5作 男はつらいよ 望郷篇|松竹映画『男はつらいよ』公式サイト| 松竹株式会社