ずっと映画のことを考えている

旧「Editor's Record」(2023.2.28変更)

「ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書」スティーヴン・スピルバーグ

民主主義を守るのは、その主権者たる国民であり、ジャーナリズムは国民のために「本当のこと」を伝えなければならない。この映画が強く問いかけるのは「その権利を保障するものとして、政府が国民のあいだに打ち立てられ、統治されるものの同意がその正当な力の根源となる」というアメリカ建国の精神だ。スティーヴン・スピルバーグにメリル・ストリープにトム・ハンクス。反骨心を失うことのない超一流の映画人が集い、今しかないテーマの、今撮るべき映画を世に投げかける。そこにハリウッドの成熟と矜持がある。

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映画『ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書』公式サイト 9.5[WED]Blu-ray&DVDリリース!

 

「ゴーギャン タヒチ、楽園への旅」エドゥアルド・デルック

芸術なんてものに心を奪われたが最後、どんなことがあろうとも、後は盲目的に人生をかけて信じ抜くしかない。ゴーギャンの生き方を辿っていくと、常識やモラル、ときには愛でさえも、それらすべてを捨てて信じ抜いた者だけが真のアーティストになれるのだとさえ思えてくる。彼はどこから来て、何者で、そして、どこへ行ったのか。知られざる人間ゴーギャンが見えてくる。

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映画「ゴーギャン タヒチ、楽園への旅」公式サイト 2018年1.27公開

「さよなら、僕のマンハッタン」マーク・ウェブ

好きな場所で暮らしていいよ、と言われたら、絶対にニューヨークだ。ニューヨークほど、知的で、お洒落で、刺激的で、懐が深く、寛容な都市を他に知らないからだ。昔も、今も、サイモン&ガーファンクルが最高に似合う街、ニューヨークで繰り広げられるほろ苦い青春映画。誰にも教えられないことを知り、理屈で理解できないことを受け入れ、そして、死ぬほど大切なもの、愛するものと決別すること。それが大人になるということだ。

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映画『さよなら、僕のマンハッタン』公式サイト

 

「バース・オブ・ネイション」ネイト・パーカー

歴史を知れば知るほど、悲しみと絶望の果てに多くの血や涙が流され、今があることを思い知らされる。映画の父、D・W・グリフィスが白人を英雄視した「國民の創生」と、あえて同じタイトルがつけられた本作が、強烈に、執拗に描くのは、差別され、虐げられた人たちの視点で語られるもう一つの歴史だ。それにしても、綿花畑や教会で歌われる黒人霊歌の崇高さたるや! いつも魂を奪われる。

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バース・オブ・ネイション| 20th Century Fox JP

「長江 愛の詩」ヤン・チャオ

中国は近いようで遠い国だ。こんな映画を観ると、かの国について、あまりに部分的にしか知らないことを強く感じてしまう。上海を起点として、途方もなく壮大な長江を、その源流へと遡る一大ロードムービー。そこで繰り広げられてきた人間の営みを思うと、そのあまりに悠久な時の流れに、ただただ圧倒される。撮影監督は『童年往事/時の流れ』、『恋恋風塵』、『花様年華』のリー・ピンビン。どこを切っても美しいその映像は世界の映画界の宝だ。

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映画「長江 愛の詩」公式サイト