ずっと映画のことを考えている

旧「Editor's Record」(2023.2.28変更)

「ロストパラダイス・イン・トーキョー」白石和彌

社会のシステムからはじかれ、過酷な運命を背負いつつも、這い蹲りながら生きる。バーチャルでは癒されることのない、孤独を抱える二人(プラス一人)が、血生臭いリアルに魂で反応し、共鳴した物語。「凶悪」(これがまさか2作目だなんて!)、「日本で一番悪い奴ら」、「彼女がその名を知らない鳥たち」の白石和彌監督は、のっけからスゴイ映画を撮っている。

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『ロストパラダイス・イン・トーキョー』オフィシャルサイト

「悪女/AKUJO」チョン・ビョンギル

やっぱり殺し屋は美女に限る!おおよそマンガでも思いつかないような、ぶっ飛びまくったバイオレンス、アクションシーンの連続。めまぐるしく展開するストーリー、いくつもの復讐を宿命づけられるたびに血が流され、銃で、刀で、斧で、マシンガンで、殺って、殺って、殺って、殺りまくる。何人死んだか、見当もつかない。ここまでくると、観る者は、ただただ映画に身を委ねるしかない。恐ろしき韓国映画。感覚が麻痺して笑けてくるほどスゲぇ。

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映画『悪女/AKUJO』公式サイト|2018年2月10日(土)公開

「おじいちゃん、死んじゃったって。」森ガキ侑大

でた。全員が欠陥だらけの登場人物。ズルくて、弱くて、幼いけれど、最後まで憎めないどころか、なんか愛おしいのは、みんなどこかで誰かを、わずかながら慮っているからだ。そうかー。家族とは、良いことも、悪いことも、同じ「思い出」を共有している共同体なんだ。あまりに豪華な俳優陣にびっくり(DVDジャケットにもなっている写真がサイコー)。主演の岸井ゆきのの映画は二本目だけどすごくいい女優さんだ。

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映画「おじいちゃん、死んじゃったって。」公式サイト

 

「希望のかなた」アキ・カウリスマキ

アキ・カウリスマキの映画はアキ・カウリスマキにしか撮ることができない。映像が氾濫する時代にあって、彼のオリジナリティーが、より一層の輝きを増しているのはなぜか。寛容さを失いつつある世界の中で、社会の片隅で生きる、市井の人たちの「小さな善意」こそが「希望」であるというささやかな主張。つつましいやさしさがじわりじわりと効いてくる、ユーモアに満ちた、温かく、柔らかな映画だった。それにしても、劇中で演奏されるバンドの音楽が、想像を絶するカッコよさ!

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映画『希望のかなた』公式サイト

「15時17分、パリ行き」クリント・イーストウッド

「やる」と「やらない」の間には、天と地ほどの違いがある。普段どんなに偉そうなことを言っていても決して「やらない」人間がいる一方で、うだつの上がらない奴だと思われていても「やる」人間がいる。地位や立場や境遇ではなく「やる」人間に対する至極まっとうな敬意。そして、本人たちをキャスティングするという決断。イーストウッドは本物のヒーローを本当によく知っている。88歳の現役監督。願わくば、もっと、もっと、彼の映画が観たい。

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映画『15時17分、パリ行き』ブルーレイ&DVDリリース