俳優生活65年の、生きる伝説。黒澤明をはじめ、成瀬巳喜男、岡本喜八、市川崑、五社英雄といった錚々たる監督たちに愛された84歳の仲代達矢が、その一挙手一投足、台詞の一つひとつに、自らのすべてを、その人生を、人間の喜怒哀楽を、全身全霊で表現する。これは悲劇であり喜劇。まるで、シェイクスピアの演劇を観ているかのような、凄まじい映画だった。
思春期。「自分が何者であるか」を気づかされ、もう二度と元通りには戻れない、なにか大切なものを喪失していく過程を、厳しく壮大な自然を背景に見事に描き切ったアイスランド映画。閉鎖的かつ殺伐とした漁村の中で、誰にも相談できず、孤独な魂を抱えながら、寄り添うように生きるティーンエイジャーたちがとても美しかった。そして、心揺さぶられるラスト。これぞ、希望の映画だ。
年末年始は一気に読みたい本を読む。今年は、2016年の年末に買って、ずっと読めずに本棚にあったこの本を選んだ。そのとき、西さんが書きたかったこと、書かずにはいられなかった思いがどっと溢れ出ている文章に、言葉に、なんども胸が熱くなる。曖昧なもの、あやふやなもの、流動的なもの、柔らかなもの、多様なもの。それらを力強く、繰り返し肯定する、純真さとやさしさを、年の初めに心に留めたい。祝福。なんていい言葉だ。
2017年もあと2日。今年観た映画(DVD)は昨年より少し増えて120本でした。今年も映画を観続けることができたこと。そのことがやっぱり幸せだなぁと感じる年の瀬です。
さて。年末恒例の、特に印象に残った映画は、
「オーバー・フェンス」山下敦弘
「走れ、絶望に追いつかれない速さで」中川龍太郎
「ラ・ラ・ランド」デイミアン・チャゼル
「ハーフネルソン」ライアン・フレック
「たかが世界の終わり」グザヴィエ・ドラン
「わたしは、ダニエル・ブレイク」ケン・ローチ
「ムーンライト」バリー・ジェンキンス
「雨の日は会えない、晴れた日は君を想う」ジャン=マルク・ヴァレ
「マンチェスター・バイ・ザ・シー」ケネス・ロナーガン
「夜空はいつでも最高密度の青色だ」石井裕也
観た順番で上記の10本。いずれも魂が震える、素晴らしい作品でしたが、今年はなんといってもケン・ローチに尽きます。
小さき声に耳を傾ける。
かつて六本木にあったミニシアター『シネ・ヴィヴァン』の回顧展にて、初めて「ケス」を観たのが大学3年の夏。以来、「リフ・ラフ」、「レディバード・レディバード」、「大地と自由」、「麦の穂をゆらす風」、「ルート・アイリッシュ」などなど、あげればきりがないほど、ケン・ローチに熱狂し、傾倒し、心酔してきましたが、彼が引退を撤回してまで撮りあげた「わたしは、ダニエル・ブレイク」には、その精神のすべてが表われていたように思います。
というわけで、年越しの準備が完了し、今から実家へと向かいます。今年も1年間、本当にありがとうございました。皆さんどうか良い年をお迎え下さい☆
人は人に影響を与えながら、人は人に影響を受けながら、生きている。そこに性別や年齢は関係ない。まさしく今が旬の、エル・ファニングも、グレタ・ガーウィグも、共に素晴らしかったけれど、なんといっても圧巻は、忘れちゃいけない、オスカーとは無縁の大女優アネット・ベニング。彼女がいたからこそ、20センチュリー・ウーマン、この映画は「20世紀を生き抜いた女性たち」への賛歌となった。