ずっと映画のことを考えている

旧「Editor's Record」(2023.2.28変更)

「雨の日は会えない、晴れた日は君を想う」ジャン=マルク・ヴァレ

言葉では説明のできない、切なく、美しい狂気。社会的な常識なんて関係ないし、他人に慰められることなど、まったく意味をなさない。我を忘れるほどの悲しみや虚しさに打ちひしがれたとき、自らの魂を解放することでしか、人間は救われない、前に踏みだせないのだということを、真摯に、誠実に、そして何よりも詩的に、この映画は教えてくれる。破壊と再生の傑作。

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映画『雨の日は会えない、晴れた日は君を想う』公式サイト | 2017年9月22日 Blu-ray&DVD リリース

 

「The NET 網に囚われた男」キム・ギドク

独裁国家であろうがなかろうが、個である私たちは、国家の政治的なイデオロギーから完全に自由になることはない。それでもなお、自らの尊厳をかけ、国家に抗った男の哀しみが、いつまでも胸を締めつける。なぜゆえ、個のための国家ではなく、国家のための個となってしまうのか。それは、国家という形態をとらずとも、あらゆる組織、あらゆる集団、それらすべてにおいても同じことだ。

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映画『The NET 網に囚われた男』公式サイト

 

 

「サバイバルファミリー」矢口史靖

文明の進化が人間の暮らしを豊かにするとは限らない。というよりも、むしろ、進化が豊かさの価値観を狭め、人間を雁字搦めに縛りつけているのではないか、という確信にも似た思いを、奇想天外なフィクションによって表わした矢口史靖監督の新境地。娯楽による文明批判のまさしくお手本のような作品だった。

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映画『サバイバルファミリー』公式サイト

 

「スウィート17モンスター」ケリー・フレモン・クレイグ

イライラ、モヤモヤ。何をしても上手くいかなかったり、誰も信じられなくなったり、あらゆることが嫌になったり。その原因がすべて自分自身にあるとわかっていても、認めることができない。世界はすべて敵。ティーンエイジャー特有の閉塞感をアメリカならではのユーモアで描いた青春映画。そのすべてがなんとも眩しくて、主人公ネイディーンのちょいとハズしたファッションもとってもオシャレ。

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映画「スウィート17モンスター」公式サイト

 

「ムーンライト」バリー・ジェンキンス

美しい映画だった。麻薬中毒者を母にもつ黒人のゲイという圧倒的マイノリティ。誰からも肯定されることのない苛酷な状況の中で、もがいて、苦しんで、絶望の果てに頬を流れた涙がほんとうに美しかった。人は誰もが孤独で、胸の奥に深い悲しみを抱えつつ、愛を探しながら生きている。そうだ、これは私たちの映画でもあるのだ。

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映画『ムーンライト』公式サイト