ずっと映画のことを考えている

旧「Editor's Record」(2023.2.28変更)

「怒り」李相日

まったく別々に起こった出来事も、どこか、大きな意味でつながっている。例えば、ユングが「共時性」といったような、不思議な「巡り合わせ」だらけの世界では、どこかで起こった事件が、まったく異なる場所の、誰かの人生を狂わせることだってあるのだ。この世界に充満している「怒り」は決して他人事ではない。これは、人を信じることが難しくなってしまった時代の、悲しい、悲しい物語だ。

f:id:love1109:20170517010930j:plain 

映画『怒り』公式サイト

「エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に」リチャード・リンクレイター

なんの意味もない、どうしようもなくくだらない、だらだらとした時間。そんな「無為な時間」の美しさも、かけがえのなさも、今なら痛いほどわかる。決して長くは続かない、人生最高の3日間を切りとった、甘酸っぱくもリアルな青春映画。ビバ☆アメリカ。

f:id:love1109:20170516000203j:plain 

映画『エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に』公式サイト

「赤ヘル1975」重松清

野球にまつわる小説を無性に読みたくなるときがある。ある意味、人生で最も幸福だったあの頃を懐かしみ、と同時に、一抹の寂しさを感じる年にもなった。1975年のヒロシマ。ときの流れは、何をもたらし、何を奪ったのか。忘れていいこと、忘れてはならないことってなんだ? 40歳オーバーにはきっとグッとくる、重松節炸裂のノスタルジックな一冊だった。

f:id:love1109:20170511233856j:plain 

『赤ヘル1975』(重松清):講談社文庫|講談社BOOK倶楽部

「湯を沸かすほどの熱い愛」中野量太

忘れられない作品の一つ、長編映画デビューとなった「チチを撮りに」から3年、中野量太監督は、母親の厳しさと優しさ、そして強さ、つまりは愛を、さらに圧倒的な熱量で撮りあげた。杉咲花の存在感も群を抜いているけど、完璧なまでに「お母ちゃん」になっていた宮沢りえはやっぱりすごい女優だ。これはボロボロ泣けたなぁ。圧巻。

f:id:love1109:20170207174958j:plain 

映画『湯を沸かすほどの熱い愛』オフィシャルサイト

 

「奇蹟がくれた数式」マシュー・ブラウン

冒頭に記される「正しくみれば数学は真理だけでなく究極の美も併せ持つ」というある数学者の言葉。宇宙にまつわる真理を探究するのが物理学であるように、数学を突き詰めれば突き詰めるほど、その「美しさ」に魅せられていくという感覚はなんとなくわかる。数学はロマン。そして、どんな分野でも、ロマンチストだけが未来を切り拓く。

f:id:love1109:20170509002800j:plain 

映画「奇蹟がくれた数式」公式サイト