このドキュメンタリー映画が感動的なのは、年寄りがヒップホップを踊るからではなく、幾多の哀しみや苦しみを経験し、まさしく最晩年に差しかかってなお、ひとは何か新しいことにチャレンジし、社会と新たなかかわりを持てるということを証明してみせたからだ。キープ・オン・ダンシング。ヒップホップという若者が生んだ未知の文化に触れ、心を動かし、敬意を示したメンバーたちは、誰もがチャーミングで、命をケチることなく躍動させている。
このドキュメンタリー映画が感動的なのは、年寄りがヒップホップを踊るからではなく、幾多の哀しみや苦しみを経験し、まさしく最晩年に差しかかってなお、ひとは何か新しいことにチャレンジし、社会と新たなかかわりを持てるということを証明してみせたからだ。キープ・オン・ダンシング。ヒップホップという若者が生んだ未知の文化に触れ、心を動かし、敬意を示したメンバーたちは、誰もがチャーミングで、命をケチることなく躍動させている。
ぶっちゃけ、なんだかなーと思いながら見ていたけれど、後半、残り30分くらいからグイグイと引き込まれる。もはや日本で最も優れた俳優の一人と言っていいリリー・フランキーの狂気は言わずもがな、今さらながらの、滝藤賢一の怪演っぷりに不意を突かれて涙。なんといえばいいのか、この軽くって熱いエンターテインメントを撮らせたら、結局、大根監督の右にでる者はいない。
命をかけて、とか、命を削って、なんて、軽々しく口にしてはいけない。わずか29年の生涯。常に死を意識せざるをえなかった棋士・村山聖の魂の対局と生き様、勝利への執念にみなぎるこの映画を観ると、そんな思いがふつふつと湧いてくる。今この瞬間がすべて。「今ぼくたちが考えなきゃいけないのは目の前の一手です」という台詞が胸にずしんと響いてくる。
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その後、芥川賞を受賞する川上未映子の「ありのまま」が生き生きと綴られる初期の随筆集。例えば「早川さんは歌いながら黙っていたし、動きながら静止していて、お客さんは瞑っていた。それを見て私は目と胸がとても熱くなって涙が滲んで鼻からも熱い息が出た。みんな生きてるんやと思った」という一節。独特の文体も良いけれど、やっぱり、感受性のセンスがハンパない。こんな風に物事を見つめ、感じることができたなら、世界はもっと醜く絶望的で、もっと美しく輝いているんだろうか。
『そら頭はでかいです、世界がすこんと入ります』(川上未映子):講談社文庫|講談社BOOK倶楽部