ずっと映画のことを考えている

旧「Editor's Record」(2023.2.28変更)

「はじまりはヒップホップ」ブリン・エヴァンス

このドキュメンタリー映画が感動的なのは、年寄りがヒップホップを踊るからではなく、幾多の哀しみや苦しみを経験し、まさしく最晩年に差しかかってなお、ひとは何か新しいことにチャレンジし、社会と新たなかかわりを持てるということを証明してみせたからだ。キープ・オン・ダンシング。ヒップホップという若者が生んだ未知の文化に触れ、心を動かし、敬意を示したメンバーたちは、誰もがチャーミングで、命をケチることなく躍動させている。

f:id:love1109:20170412005917j:plain 

映画『はじまりはヒップホップ』オフィシャルサイト

 

「SCOOP!」大根仁

ぶっちゃけ、なんだかなーと思いながら見ていたけれど、後半、残り30分くらいからグイグイと引き込まれる。もはや日本で最も優れた俳優の一人と言っていいリリー・フランキーの狂気は言わずもがな、今さらながらの、滝藤賢一の怪演っぷりに不意を突かれて涙。なんといえばいいのか、この軽くって熱いエンターテインメントを撮らせたら、結局、大根監督の右にでる者はいない。

f:id:love1109:20170411012551g:plain 

映画『SCOOP!』公式サイト

 

「聖の青春」森義隆

命をかけて、とか、命を削って、なんて、軽々しく口にしてはいけない。わずか29年の生涯。常に死を意識せざるをえなかった棋士村山聖の魂の対局と生き様、勝利への執念にみなぎるこの映画を観ると、そんな思いがふつふつと湧いてくる。今この瞬間がすべて。「今ぼくたちが考えなきゃいけないのは目の前の一手です」という台詞が胸にずしんと響いてくる。

f:id:love1109:20170406000247j:plain  

映画『聖の青春』 4.28(金)Blu-ray&DVD発売!4.1(土)Blu-ray&DVDレンタル開始!

 

「そら頭はでかいです、世界がすこんと入ります」川上未映子

その後、芥川賞を受賞する川上未映子の「ありのまま」が生き生きと綴られる初期の随筆集。例えば「早川さんは歌いながら黙っていたし、動きながら静止していて、お客さんは瞑っていた。それを見て私は目と胸がとても熱くなって涙が滲んで鼻からも熱い息が出た。みんな生きてるんやと思った」という一節。独特の文体も良いけれど、やっぱり、感受性のセンスがハンパない。こんな風に物事を見つめ、感じることができたなら、世界はもっと醜く絶望的で、もっと美しく輝いているんだろうか。

f:id:love1109:20170405001401j:plain

『そら頭はでかいです、世界がすこんと入ります』(川上未映子):講談社文庫|講談社BOOK倶楽部

 

「イーグル・ジャンプ」デクスター・フレッチャー

いやーーーーーあ、興奮した!!! 単なる勝ち負けではなく、私たちが、なぜスポーツに、なぜオリンピックに魅せられるのか、その理由が、105分にギュッと凝縮されている。スポーツ選手はいわば全員がクレイジー。自己の限界を超えようとする、そのときに「栄光の瞬間」はやってくる。あの「クール・ランニング」で描かれたジャマイカのボブスレーチームが参加した1988年のカルガリーオリンピックで起こった実話をもとにしているというのも泣ける。80年代、熱いぜ。

f:id:love1109:20170404002832j:plain 

イーグル・ジャンプ | Digital HD, Blu-ray, DVD | 20th Century Fox JP