その後、芥川賞を受賞する川上未映子の「ありのまま」が生き生きと綴られる初期の随筆集。例えば「早川さんは歌いながら黙っていたし、動きながら静止していて、お客さんは瞑っていた。それを見て私は目と胸がとても熱くなって涙が滲んで鼻からも熱い息が出た。みんな生きてるんやと思った」という一節。独特の文体も良いけれど、やっぱり、感受性のセンスがハンパない。こんな風に物事を見つめ、感じることができたなら、世界はもっと醜く絶望的で、もっと美しく輝いているんだろうか。
『そら頭はでかいです、世界がすこんと入ります』(川上未映子):講談社文庫|講談社BOOK倶楽部