ずっと映画のことを考えている

旧「Editor's Record」(2023.2.28変更)

「ストリート・オーケストラ」セルジオ・マシャード

現実逃避は悪くない。というより、映画や音楽や文学に、何か意義があるとするなら、悲しみを一時でも忘れさせ、逃れられない苦しみから、一瞬でも自らを解放してくれるということだ。スラム街で生まれた交響楽団。この映画が素晴らしいのは、そこのみで輝き、そこのみで自らを解放する若者たちが、ともに音楽を奏でるというところ。音楽によって魂が浄化されていくところだ。

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映画『ストリート・オーケストラ aka VIOLIN TEACHER』公式サイト

 

「エミアビのはじまりとはじまり」渡辺謙作

どんな状況であっても「笑える」というのはとても大切なことだ。シリアスに塞ぎこみ、絶望に陥ったとしても、「笑う」ことで救われ、「笑う」ことで、また、新しくなにかをスタートさせることができる。これはそんな「笑い」の強さと可能性を信じる人たちが作った物語。それにしても、「笑みを浴びる」っていい言葉。前野朋哉の「YOKOHAMA HONKY TONK BLUES」もカッコ良かったなぁ。

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映画『エミアビのはじまりとはじまり』公式サイト

「AMY エイミー」アシフ・カパディア

その歌声を永遠に残すために、神さまがほんの少し、この世に授けたとしか思えない、早熟の天才エイミー・ワインハウスの生涯を描いたドキュメンタリー。彼女の天才が人生を狂わせたのか、狂った人生が彼女に本物の歌を歌わせたのか。哀しみと憂いがたゆたうその歌声が胸に沁みて、胸に沁みて、なんだかとても泣けてくる。

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映画『AMY エイミー』公式サイト

「奇跡の教室 受け継ぐ者たちへ」マリー=カスティーユ・マンション=シャール

なんてこった。ナチス・ドイツが、なぜゆえユダヤ人を迫害し、殺戮しなければならなかったのか? 40年以上も生きてきて、その質問に対する、明確な答え一つ持ってないことに只々愕然とする。知識は何の役にも立たない。知っているか、知らないか、なんて、重要ではない。大切なのは、想像力をどこまで広げられるか。自ら感じ、自ら調べ、自ら考えれられるかどうか。フランスの多民族・多宗教が複雑に入り組んだクラスの落ちこぼれ生徒たちが本当の「学び」を教えてくれる。

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映画『奇跡の教室〜受け継ぐ者たちへ〜』オフィシャルサイト

 

 

「トレジャー オトナタチの贈り物。」コルネリュ・ポルンボユ

うっそおおおおおん。桂文枝ばりにイスから転げ落ちそうになる結末。なんとも独特な「間」で繰り広げられる会話と、淡々と進行していく物語に、人間の、欲深いながらも、滑稽で、どうにも憎めない性が描かれる。事実は小説よりも奇なり。驚くべきはこれが事実に基づいているということ。それにしても不思議な映画だ。

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果たしてお宝を手に入れることはできるのか!?映画『トレジャー オトナタチの贈り物。』予告編 - YouTube