ずっと映画のことを考えている

旧「Editor's Record」(2023.2.28変更)

「AMY エイミー」アシフ・カパディア

その歌声を永遠に残すために、神さまがほんの少し、この世に授けたとしか思えない、早熟の天才エイミー・ワインハウスの生涯を描いたドキュメンタリー。彼女の天才が人生を狂わせたのか、狂った人生が彼女に本物の歌を歌わせたのか。哀しみと憂いがたゆたうその歌声が胸に沁みて、胸に沁みて、なんだかとても泣けてくる。

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映画『AMY エイミー』公式サイト

「奇跡の教室 受け継ぐ者たちへ」マリー=カスティーユ・マンション=シャール

なんてこった。ナチス・ドイツが、なぜゆえユダヤ人を迫害し、殺戮しなければならなかったのか? 40年以上も生きてきて、その質問に対する、明確な答え一つ持ってないことに只々愕然とする。知識は何の役にも立たない。知っているか、知らないか、なんて、重要ではない。大切なのは、想像力をどこまで広げられるか。自ら感じ、自ら調べ、自ら考えれられるかどうか。フランスの多民族・多宗教が複雑に入り組んだクラスの落ちこぼれ生徒たちが本当の「学び」を教えてくれる。

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映画『奇跡の教室〜受け継ぐ者たちへ〜』オフィシャルサイト

 

 

「トレジャー オトナタチの贈り物。」コルネリュ・ポルンボユ

うっそおおおおおん。桂文枝ばりにイスから転げ落ちそうになる結末。なんとも独特な「間」で繰り広げられる会話と、淡々と進行していく物語に、人間の、欲深いながらも、滑稽で、どうにも憎めない性が描かれる。事実は小説よりも奇なり。驚くべきはこれが事実に基づいているということ。それにしても不思議な映画だ。

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果たしてお宝を手に入れることはできるのか!?映画『トレジャー オトナタチの贈り物。』予告編 - YouTube

「ファング一家の奇想天外な秘密」ジェイソン・ベイトマン

ニコール・キッドマンの仕事の選び方はとても魅力的だ。女優にとって、ときに邪魔なものにもなりかねない「美しさ」や「華やかさ」をひょいと脱ぎ捨て、やむにやまれぬ絶望の淵で、それでも生きていく人間を演じたら、このひとの右にでるひとはいない。親と子という呪縛からの解放と自立。そして、素晴らしいキャスト。決して万人受けはしないだろうけど、私的には、いつまでも余韻の残るいい映画だった。

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株式会社アメイジング D.C.

 

 

「白い帽子の女」アンジェリーナ・ジョリー

どんなに仲睦まじい夫婦であったとしても、結局のところ、それぞれの孤独と向き合い、それを乗り越えねばならない過程があるということか(この映画を撮った後にこの二人が離婚したという事実がなんとも皮肉)。内面の表出。自己表現の極み。自分をさらけだすことを極限まで課したアンジェリーナ・ジョリーの鬼気迫る演技が痛々しくさえあった。表現者であり続けるということは、なんて凄まじいことなんだ。

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映画『白い帽子の女』オフィシャルサイト